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垢舐め
第一章
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                 垢舐め
 藤浪耕太の部屋のチャイムが鳴った、それも朝の七時という休日にしてはかなり早い時間にだ。そのチャイムに起きた耕太は扉の方に行ってそして開けるとだ。
 妹、中三で今年卒業し高校に入る彩加がいてだった。こう彼に言ってきた。
「中に入れて」
「えっ、何でここに」
「聞いてなかった?私今からここに住むから」
「今からって」
「とにかく中に入れて」
 その大きくやや悪い感じというか気の強さがわかる目を兄に向けて言う。左目の付け根に泣き黒子があり眉は細く長い。顔は面長で唇は薄く黒髪をロングヘアにしている。一七五ある耕太と比べて背は二十センチ位低い。
 その妹がだ、兄に言うのだった。
「それから詳しいこと話すから」
「うん、じゃあ」
 とにかくだ、耕太は妹を家の中に入れた。そして居間のちゃぶ台のところで座って向かい合うとだ。彩加は彼にあらためて言った。
「私八条学園高等部に通うことになったの」
「そっちに合格したんだ」
「そうよ」
 その気の強そうな目で耕太を見つつ答えた。
「それで今日からここで住むことになったの」
「ええと、僕が八条学園のある神戸の会社に務めているから」
「八条科学研究所ね」
「そうそう、そこでね」
「研究員として働いているのね」
「それでスカウトされたんだ」
 耕太は理系の大学に進み成績優秀とのことで大学院に進みそこで博士号も貰った。学費は大阪の市立の大学だったので学費が少なくしかも奨学金を受けていたので親の負担は少なかったのが幸いした。
「それで今年から働いてるけれど」
「そうよね、それでね」
「高校はなんだ」
「ここから通うかな」
「何で家から通わないの?」
 耕太はぼさぼさの髪を左手で掻きつつ妹に問うた。
「岸和田から」
「お兄ちゃんと同じ理由よ」
 これが妹の返事だった、憮然とした声でのそれだった。
「だからよ」
「ああ、遠いから」
「岸和田から神戸って時間かかるでしょ」
「そうそう、僕もそれが嫌でね」
「お部屋借りて通ってるでしょ」
「ここからね。とはいっても神戸より大阪の方が好きだから」
 それでとだ、兄は妹に答えた。
「西淀川のここに住んでるんだ」
「それで私もなの」
「今日からここに住んで」
「八条学園高等部に通うから」
「あそこって確か日本全国、世界各国から学生さんも職員さんも集まるから」
 彼が勤務している八条科学研究所と同じ八条グループが運営しているので知っている、研究員として大学の理工学部に出入りすることも多い。
「寮あるよ」
「お父さんとお母さんに寮は嫌だって言ったのよ」
「それでなんだ」
「そう、ここに住むことになったのよ」
「そうだったんだ、ただね」
「初耳だっていうのね」

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