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兄はコミケ好き
第四章
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「だからね」
「待っていてもなのね」
「仕方ないから。明日ね」
「ええ、明日ね」
「宿題教えてもらいなさい」
「そうするわ」
 こう母に答えてだ、侑花は自分の部屋のベッドに向かってその中に入った。まだ五歳の妹はもう寝ていた。
 そしてだ、翌朝の六時にだ。
 侑花は起きるとベッドからすぐに出てだ、パジャマのままでだ。
 兄の汚い部屋に入ってだ、ベッドの上にトランクスとシャツのままで寝ている兄に言った。
「お兄ちゃん宿題」
「んっ、侑花か?」
「昨日約束したわよね」
「ああ、あのことな」
 寝惚けている顔で置きつつだ、昭一は上の妹の応えた。
「御免な、昨日は帰るの遅くて」
「それお母さんにも言われたから」
「そうだったんだな」
「結局何時に帰ってきたの?」
「家に帰ったのが十二時だったな」
 まさに終電かそれ位の時間だ。
「いや、コミケ並んだな」
「大分買ったの?」
「何十冊ってな」
「呆れた、けれど」
「けれど?」
「楽しかったみたいね」
「ああ、欲しい本は全部買ったよ」
 昭一はベッドから出て膝までのジャージをはきつつ妹に答えた。とはいっても目はまだ半分以上寝ている。
「それこそな」
「それはよかったわね、ただお部屋さらに汚くなったわね」
「そのうち掃除するな」
「そうしないとお母さん怒るわよ」
「だよな、まあとにかくな」
「宿題教えて」
 侑花は兄にあらためて言った、そして手に持っていた学校と熟のそれぞれの算数の問題集を差し出した。
「今からね」
「ちょっと待ってくれ、トイレ行ってな」
「それからなの」
「ああ、それから教えるな」
「お願いね」
「約束だからな」
 母の言う通りにだ、兄は約束はしっかりと頭に入れていた。そのうえでの返事だった。
「ちゃんと教えるな」
「そうしてね」
「じゃあトイレ行くからな」
 昭一は立ち上がったまま妹にまたこう言った。
「ちょっと待ってろよ」
「ええ、それじゃあね」
「いや、昨日は楽しかったな」
 自分の部屋から出ながらだ、昭一はこうも言った。
「本当にな」
「コミケってそんなに楽しいの」
「本屋さんじゃ買えない漫画が一杯手に入るからな」
 同人誌、それがというのだ。
「だからな」
「楽しいのね」
「ああ、そうなんだよ」
「何か全然わからないけれど」
「何なら御前ももうちょっと大きくなったら来るか?」
 結構あからさまにだ、昭一は妹をコミケに誘った。
「侑美も一緒にな。楽しいぜ」
「いいわ、私漫画は本屋さんのだけで充分だから」
「だからか」
「そう、別にいいわ」
「まあ読みたい本は読めばいいさ」
 昭一は侑花の断りの言葉を受けてまた言った。
「とにかくトイレ行って来るな」
「その間待ってる
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