第二十六話 叔父として王としてその二
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「だから話を聞くべきだ」
「お二方の」
「どちらも」
「そうだ、ただ幾分かマリーは情が強く」
王はマリーのこの資質を話した、そしてさらにだった。
「マイラは視野が狭い」
「そのことがお二方の弱みですね」
「それぞれの」
「このことも踏まえて、ですね」
「お話を聞くべきですね」
「マリーもマイラも同じだ」
二人共、というのだ。
「兄上の娘なのだ」
「マリー様もマイラ様も」
「どちらの方もですね」
「公平であり」
「同じなのですね」
「マイラは確かに側室の子だ」
王の兄であった二代前の王のだ、王はここでこのことも言った。紛れもない誰もが知っていることだからこそ。
「しかしだ」
「それでもですね」
「あの方は王の姫君」
「兄王のご息女ですね」
「紛れもなく」
「そうだ」
まさにというのだ。
「母親のことは関係ないのだ、それに」
「それに?」
「それにといいますと」
「立派な方だった」
マイラの母についてだ、王は顔を正面床に伏している彼から見て真上になる天井を見た。そこには神々に祝福された人々が描かれている。
その絵を見つつだ、王は側近達に話した。
「非常にな」
「確かに。あの方は立派でした」
「素晴らしい方でした」
彼女を知る側近達のうち幾人かが王に応えた。
「気品があり誇りも備え」
「曲がったことはされませんでした」
「それでいて情けもおありで」
「立派な方でした」
「そうだった、だからこそ王も愛されたのだ」
こう言うのだった。
「王妃を迎える前にな」
「やがて王妃にと思われていましたが」
「それが、でしたね」
「急な病で亡くなられましたね」
「そして王妃を迎えられましたね」
「そうだった、側室ということになっていたが」
それがというのだ。
「王妃に迎える筈だったのだ」
「本来は」
「そうなっていましたね」
「あの方については」
「ですからマイラ様も誇りには思われていますね」
「そうだ、彼女は自分の母親のことを誇っている」
このことは間違いないというのだ。
「心からな、だが」
「それでもなのですね」
「あの方が側室であられた」
「そのお立場で一生を終えられたからですね」
「ずっとそのことを負い目に思われている」
「そうなのですね」
「誇りに思う母だが負い目でもある」
そうした複雑な状況にあるというのだ、マイラは。
「そしてそれが彼女を旧教への信仰と学問、孤独に導いているのだ」
「孤独にもですね」
「なられているというのですね」
「お母上のことが」
「あの方のことが」
「そうだ、それがだ」
どうにもというのだ。
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