第一章 天下統一編
第八話 武田旧臣の仕官
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俺は秀吉から相模守の官職に任じられて以来、陰鬱な毎日を過ごしていた。
俺は武将だから前線で激しい斬りあいをする必要はない。だが、自分の身は自分である程度守れないとまずいと駿河前左大将思っている。北条側には相州乱破の流れを汲む風魔衆を従えている。
風魔衆は諜報活動に長じているというより、敵陣の攪乱を得意とする。そのため荒事に長けている。
十二歳の俺の体躯で剣の稽古を頑張っても、大人の侍相手に五分の戦いをすることは無理だ。もし、俺が戦場で孤立した状況で敵に襲撃された場合、それを撃退することは難しい。
後半月位で俺のどう足掻こうと剣術の技量が激変するとは思っていない。だが、今後のことを考えれば、しっかり鍛錬をしておく必要がある。調度良く俺のところにおあつらえつきの人間が仕官してくれた。
胤舜様様だな。
今の俺の伝手は大和国興福寺くらいしかない。それも細い糸だ。これを機会にもっと深く交流した方がいいかもしれない。
胤舜は柳生宗章と柳生宗矩を紹介してくれた。二人は大和国の柳生庄の生まれだ。大和国といえば俺の叔父、豊臣秀長、の領地になる。柳生家は豊臣秀長が陣頭指揮を執る検地で不正確な石高の申告したために柳生庄を没収され没落した。生活に困窮する柳生家を見かねた胤舜が柳生家に仕官の話を持って行ったらしい。
柳生宗矩から聞いた話だが、胤舜は柳生家当主である柳生宗厳と武芸を通じて親しい関係にあるらしい。柳生宗厳は柳生石舟斎の名乗りのほうが有名で名の知れた剣豪である。そして、柳生宗章と柳生宗矩の父でもある。その二人は元々北条征伐で陣借りをするつもりだったらしく、俺の話は渡りに船だったようだ。
ただ、柳生宗章は性格が気難しく「陣借りするつもりだったが、修行中の身なので仕官はしない」と言い出した。歴史でも徳川家康からの仕官の話を蹴った位だし剛毅な性格なのだと思う。そんな彼が何で俺の弟である小早川秀秋に仕官したのかが理解できない。でも、俺の元に食客として身を寄せているため歴史通りになるか分からない。
俺は二人とも手放すつもりはない。気難しい柳生宗章には俺の護衛役を頼むことで話をつけているから、しばらくは俺の元にいると思う。その間に仕官してもらえるように頑張ろう。
「殿、鍛錬中に物思いにふけるとは何事です!」
柳生宗矩が厳しい表情で俺に叱咤してきた。そう言えば今は柳生宗矩に剣の稽古をつけてもらっていたのだった。最近、悩み事が多くて考え込むことが多い。
こんなところを刺客に襲われたら確実に死にことになるな。俺は自分の頬を両手で叩き気分を切り替えた。
「又右衛門、すまない。仕事が忙しくて考え込んでしまった」
「その隙が命取りになります。戦場で相手は殿の都合に合わせてはくれません」
柳生宗矩は俺の弁明を払いのけて厳しい
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