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トシサダ戦国浪漫奇譚
第一章 天下統一編
第八話 武田旧臣の仕官
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に招待したいと言っている。これ幸いだ。今の俺の身分では徳川家康に会う機会なんてそうそうない。この機会を逃す訳にはいかない。徳川家康にはできるだけ早めに顔を覚えてもらった方がいい。

「殿、駿河前左大将様はなんと言ってきているのです」

 手紙を俺に持ってきた秀清が俺に聞いてきた。手紙の内容が気になっている様子だった。

「駿河前左大将様は曽根昌世の仕官について何も咎めるつもりはないと言っている。それと俺を屋敷に招きたいそうだ」

 俺は手紙を秀清に手渡した。俺の返事にほっとした秀清だったが、俺の最後の話に驚きながら受け取った手紙を読み出した。

「駿河前左大将様がお前を何でわざわざ屋敷に呼ぶんだ!?」

 秀清は驚きのあまり地を出し俺に話しかけだした。徳川家康が俺を屋敷に招待する理由は分からない。だが、俺に興味を持ったことは事実だろう。
 幾ら俺が秀吉の親類とはいえ、俺は元服したての小僧で小出家の嫡子からは外れている。俺の実家は寧々叔母さんの兄の家だからそれで気を使ったとも取れなくもない。でも、そうだとしても俺みたいな五千石程度の旗本に気を使うものだろうか。
 これが俺の弟、秀俊(後の小早川秀秋)なら分かる。弟は秀吉の養子、れっきとした豊臣家の連枝、だからな。

「向こうが招待している以上は俺には断れないだろ」

 俺は笑みを浮かべ秀清に話しかけた。

「駿河前左大将様は曽根内匠助の件でお前に不満があるのではないか? それでわざわざ招待とかこつけて自分の屋敷に呼んだのかもしれない」
「向こうは東海道を制する百三十万石の大名ですよ。関白殿下は駿河前左大将様に上洛中の賄い領として十万石を出しています。これだけで関白殿下は駿河前左大将様に凄く気を使っています。俺が小出家・木下家に縁があると言っても、俺みたいな小身の若造に気を使う理由なんてないでしょう」

 秀清の心配を払拭するため俺は自論を述べた。俺の話に秀清は少し落ち着いた様子だった。

「では、理由は何なのだ?」

 それを俺がわかる訳がない。

「叔父上、行けばわかると思います。下々の俺達が雲上人の考えなんて思いつくわけがないでしょう。ですが、俺に脅迫の類をする気はないはずです。もしやるなら手紙なんて送ってこずに使者を送って直接伝えるはずです」

 秀清は俺の説明を聞きようやく納得した様子だった。もう少し秀清には肝が据わって欲しいものだ。

「共には誰をつけるつもりだ」

 秀清は気分を切り替え、三日後の準備に話し出した。誰を連れて行くか。

「駿河前左大将様も特に人選を指定していませんから叔父上と柳生五郎右衛門だけいいです」
「柳生五郎右衛門を連れて行っても良いのか?」
「どういう意味です」

 俺は秀清の言葉の意味が分から
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