第一章 天下統一編
第八話 武田旧臣の仕官
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さい」
俺は本多正信に頭を下げ謝罪した。俺は彼に食い下がることなくあっさりと引いた。駄目もとで聞いただけから別に問題ない。
「いえいえ、全く気にしておりません」
本多正信は気にした様子はなかった。
「駿河前左大将様が色よい返事をくださることをお待ちしております」
「ところで。小出相模守様は曽根内匠助の出奔の理由をどこで知ったのですか? 曽根内匠助から聞いたのですか?」
俺が会話を切り上げようとすると、本多正信は俺に質問してきた。今頃になって聞いてくる話じゃないと思うんだがな。
「曽根昌世は一言も語っておりません。当家の者に事情を知っている者がいたのでたまたま知ったのです」
「小出相模守様は曽根内匠助の出奔の理由を知ってどう思われましたか?」
本多正信は済ました顔だが彼の目は俺を探るような雰囲気だった。こういう視線は気分が悪い。
「何も思うところはありません」
俺は即答した。変に飾った言葉を言う必要はないと思う。そんことすれば俺が何か思うところがあると言っているようなものだ。
「本当に何もないのですか?」
本多正信は再度質問してきた。この様子だと俺が何か言うまで聞いてきそうな雰囲気がした。
「そうですね。敢えて言うなら。曽根内匠助は駿河前左大将様とは反りが合わなかったということでしょう」
俺は思案する素振りをした後、言葉を何気なく思いついたように装いながら答えた。
本多正信は俺の返答に口元を緩めていた。
「では、小出相模守様と曽根内匠助は反りが合いましょうか?」
「わかりません」
俺は言葉を一旦切る。本多正信は俺が喋り出すのを待った。
「私は若輩の身ですから周囲の声に耳を傾け試行錯誤しながら家臣達とともに歩むつもりです。それが若さの特権ではないでしょうか。曽根内匠助は縁あって当家に来たのですから末永く君臣の関係を築きたいと思っています」
俺は落ち着いた表情で本多正信に答えると、本多正信は「一本取られましたな」と答えた。
下手に「反りが合う」と答えることができる訳がない。そんな言い方をすれば「徳川家康に器量がなく、俺は徳川家康より器量がある」と言っているように相手に受け取られかねない。
徳川家康は秀吉亡き後の豊臣家に対し、そういった些細なことに因縁をつけていた気がするから余計なことは言わない方がいい。
その後、俺は徳川屋敷を後にした。
翌日、徳川家康から俺に手紙が届けられた。その内容は俺が曽根昌世を家臣にすることに何も咎めるつもりはないことと、不在で会うことがきなかったことへの侘びの言葉と詫びの証に三日後に徳川屋敷に招待したいと書かれていた。
俺は手紙を凝視し何度も読み上げた。徳川家康が俺を屋敷
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