第一章 天下統一編
第八話 武田旧臣の仕官
[7/10]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
の功名というものです」
「そんなに褒めても何も出せませんぞ」
本多正信は機嫌良く俺に返答してきた。
「今日、駿河前左大将様の元に参った理由は他でもありません。当家に曽根昌世が仕官を希望しております。私は曽根昌世を召抱えるつもりでいますが、聞けば曽根昌世は過去に駿河前左大将様にお仕えし理由があって出奔したと聞きました。それで駿河前左大将様には当家に曽根昌世を召抱えることはお許し願いたいと思いました」
俺は澱むことなく自分の用件を全て本多正信に伝えた。この屋敷に秀清を向かわせた時、秀清には「曽根昌世のことで話が有る」と伝えていたから本多正信も俺の今言った話は想定の範囲内だろう。その証拠に彼は落ち着き払った様子だった。
「わざわざご丁寧に小出相模守様自ら足を運んでいただきありがとうございました」
俺もここまで丁寧に挨拶する必要はないと思っている。まだ、奉公構が一般的になっている時期じゃない。でも、話を通しておいて相手も嫌な気分はしないだろう。
その証拠に本多正信は俺に友好的な雰囲気だった。
「確かに曽根昌世は当家を出奔しております。いずこに居るかと思っておりましたが小出相模守様の元に居りましたか」
本多正信はしみじみとした様子で喋りだし、一瞬視線を俺から逸らし遠くを見る目をしていた。彼は甲斐武田旧臣を徳川家に組み込んだ功績があったはず。曽根昌世とも面識があるのかもしれない。
「曽根内匠助は元気にしておりますか?」
本多正信は徐に俺に聞いてきた。
「元気にしています」
「そうですか」
本多正信は安堵した表情を浮かべた。
「確かに小出相模守様の話は承りました。殿にはしかとお伝えいたしますのでご安心ください。後日、殿にご裁可を仰ぎ返答させていただきます」
予想通り俺が曽根昌世を家臣することに了承するとの返答は無かった。本多正信がわざわざ対応するあたり、本当に徳川家康は不在なのだろうかと勘繰ってしまう。案外隣の部屋で聞き耳を立てているのかもしれない。
「この場でご返答はいだけないのでしょうか?」
本多正信は笑みを浮かべ口を開いた。
「私は代理で話をお聞きしただけこと。この話の判断は殿がご裁可なされます」
本多正信の言い分は最もなことだ。だが、ここまで話を引き伸ばす必要があるのかな。
俺の知る歴史では天正十九年に曽根昌世が蒲生氏郷に仕えている。この時期の蒲生氏郷は伊勢十二万石の大名だから俺に比べ大身だから、俺の場合とは比べることがおかしいのかもしれない。
それに蒲生氏郷の場合、一々徳川家康に話を通していないのかもしれない。徳川家としても話を通されたら正式な手順を執らざる得ないのだろう。
「勇み足でした。本多佐渡守殿、ご無礼をお許しくだ
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ