第一章 天下統一編
第八話 武田旧臣の仕官
[6/10]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
康は昔のことを根に持つ性格だから念のためだ。
それに、徳川家康に堂々と気兼ねせずに接触できる良い機会だ。
徳川家康から見れば俺は小身だから家臣に対応させるかもしれない。それならそれでもいいと思う。徳川家に対して話を通した事実が重要だ。
「殿、駿河前左大将様はご在宅ではないということです」
先に徳川屋敷に向かっていた秀清が馬を走らせて戻ってきた。
徳川家康は不在か。
事前の連絡なしの訪問だから仕方ないな。
「叔父上、駿河前左大将様への要件は伝えてくれましたか?」
「それは滞りなく伝えました。本多佐渡守様が話を聞いてくださるそうです」
俺は本多正信の名前を聞いて沈黙した。
徳川家康の懐刀、本多正信が対応するなんて憂鬱な気分だ。
「本多佐渡守殿は話を聞くと仰られたのですか?」
俺は秀清に気になる点を質問した。
「はい、そのように言いました。何か問題でも」
本多正信は徳川家康以上の食えない狸爺だと思う。「話を聞く」とは俺の要件を了承したという意味じゃない。言葉通り話だけ聞くということだ。この分だともう一度徳川屋敷に出向く羽目になるな。二度手間になることが面倒だ。秀清は俺が何を気にしているのか理解していないようだ。
「叔父上、問題はありません。徳川屋敷に向かいましょう」
本多正信は俺に会うというなら会おう。ここまで来て帰るのも後々面倒なことになりそうだからな。俺は気持ちを切り替えて徳川屋敷に向かうことにした。
俺が徳川屋敷に到着すると、すんなりと屋敷の中に通され一室に通された。調度品は一切無く殺風景な六畳間の部屋だ。
「お待たせいたしました」
俺と秀清が部屋で待っていると本多正信が障子戸を開け部屋に入ってきた。彼の初印象は物腰穏やかな痩せた中年だった。本多正信は槍働きというより徳川家康の参謀として功績を上げた人物だ。それに熱心な一向宗門徒であり、徳川家康を裏切り対立したこともある。
徳川家内では本多正信のことを面白くないと思っている者達もいるに違いない。それでも徳川家康は本多正信を重用している。
裏切っても徳川家康に重用されるということは、それだけ優れた人物だということだ。一時期本多正信が仕えていた松永久秀は「非常の器」と評している位だからな。
徳川家康の損得抜きで使える者は使い尽くす性格は俺も模範にしないといけないと思う。
「本多佐渡守正信と申します。小出相模守様、殿は使者殿にお伝えした通り不在にて。私が替わりにご用件を承りましょう」
本多正信は俺に挨拶をしつつ、秀清の方を一瞥した。
「本多佐渡守殿には一度お会いしたいと思っておりました。駿河前左大将様に目通り適わないことは残念ですが、本多佐渡守殿に会え怪我
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ