第一章 天下統一編
第八話 武田旧臣の仕官
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滅亡後に城主に任じられたところからみても間違いない。
その曽根昌世が俺の元に来ている。それは彼が徳川家康の元を出奔したことを意味する。
曽根昌世が出奔した理由はなんとなくわかる。彼は早い時期に武田家を裏切った。それを徳川家康が嫌ったのかもしれない。武田家の同盟者といえる穴山梅雪と違い、曽根昌世は武田信玄に引き立てられた武田家の家臣だ。徳川家康が裏切らせたにも関わらず勝手な話だと思うが、徳川家康の中では含むところがあったのかもしれない。
北条征伐後、関東に移封された徳川家康は禄に抵抗しなかった北条家の家臣達を強制的に帰農させた。そこに徳川家康の価値観が見て取れる。
だが、曽根昌世が有能な人材であることは間違いない。だから俺は彼が仕官するというなら雇う。裏切るかもしれない人材だから使わないのは勿体ない。問題のある人材なら使いどころを誤らなければいいのだ。
「私は小出相模守藤四朗俊定といいます」
俺が名乗ると三人は俺に対して深く頭を下げた。
「長門守、彼らは当家に仕官を希望されているのか?」
「殿、その通りでございます」
俺が藤林正保に話を振ると頷いた。三人も探してきてくれたのか。それも一人は大物じゃないか。彼の満足する知行を出せる自信がない。千石が限界だな。北条征伐で領地が増えればもっと出せるんだがな。
「殿、この方々は武田旧臣でございます。乾殿は戦場の経験がございません」
俺の悩みを余所に藤林正保は話を続けた。その話を聞いて驚くと同時に乾正信のことを訝しんだ。乾正信はどう見ても中年である。この年で戦場の経験がない武田旧臣がいるのだろうか。もしかして内政方面の家臣なのだろうか。それならそれで構わない。
「そのお歳でですか?」
俺は奇妙に思い乾正信に聞いた。乾正信は風体は困窮していそうだったが、元々の育ちの良さが顔に表れている。
「恥ずかしながら。私の父は徳栄軒様に誅殺され、私は幼少であったため甲斐にて蟄居しておりました」
「乾殿のお父上は武田家重臣、板垣信憲殿にございます」
乾正信は言いづらそうに自分の身の上を語りだした。その後を継ぐように藤林正保が彼の素性を俺に説明しだした。
甲斐武田家の板垣氏。俺はピンときた。乾正信は武田家の庶流である板垣氏の出身ということになる。板垣氏の出身だったなら蟄居といってもそれなりの地位の共がいたはず。
彼を仕官させても支障はない。今後のことを考えれば家臣つきの人材の方がありがたい。
「乾殿、失礼を承知でお聞きします。武芸の嗜みはありますか?」
俺は聞きづらい質問をさせてもらった。いい年した武家出身の大人に聞くことじゃないが、北条征伐に同行してもらうなら聞いておく必要がある。
「勿論です!」
乾正信は姿勢を
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