第一章 天下統一編
第八話 武田旧臣の仕官
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は決してそのような」
「その通りござるが少し違います」
柳生宗矩は喋り終わるのを他所に柳生宗章が会話に割り込んできた。久方ぶりに口を開いたので俺は彼が何を話すか興味を持った。
「拙者は真剣勝負しかいたしません。拙者は相模守様と死合をするわけにはまいりません。故にご容赦いただきたい」
剣を抜き向き合う以上は殺しあう。柳生宗章は俺にそう言った。俺に剣の稽古をつける気はないと言い切られてしまった。柳生宗章にとっては剣は遊びでは無いと言いたいのだろう。こうまで言われては剣の稽古を頼む訳にはいかない。
普通の主君ならここで柳生宗章を手打ちにしようと思うだろう。
でも、俺は大笑いした。
「殿!?」
突然大笑いした俺に柳生宗矩は動揺する。柳生宗章は静観した様子で俺のことを見ていた。
「はっきりと言ってくれてすっきりしたよ」
俺は笑顔で柳生宗章を見た。
「五郎右衛門、お前は私の護衛役に徹してくれ。又右衛門、お前には私の剣の稽古をこれからも頼む」
「承知」
「かしこまりました」
俺は強引に話をまとめた。俺に剣の稽古をしたくないという人間にしつこく頼み過ぎても時間の無駄だ。それに柳生宗章には俺に仕官してもらいたいから、俺の器の大きいところを見せておく必要がある。
「藤林長門守様が殿に目通りしたいと参っております」
俺が柳生兄弟と話をしていると、小姓の一人がやってきた。この小姓を含め、俺に仕える小姓達は俺の本当の実家である木下家からきた者達だ。小出家から来た者達は秀清の下につけている。小姓達は俺と年齢があまり変わらない。俺と歳が近いから気を使う必要ないため気が楽でいい。
「又右衛門、また剣の稽古を頼む」
俺は柳生宗矩に声をかけ柳生宗章を伴って奥座敷に移動した。俺が室内に入ると藤林正保と見知らぬ三人が平伏したまま待っていた。
俺が上座に着座すると藤林正保が口を開いた。
「殿、ご紹介いたします。左から、曽根内匠助殿、乾加兵衛殿、孕石小右衛門殿でございます」
「曽根昌世と申します」
「乾正信と申します」
「孕石元成と申します」
「面をあげられよ」
三人は藤林正保に紹介された順番で名乗った。俺は「曽根昌世」と名乗った四十歳位の中年の男を見て固まってしまった。「曽根内匠助」には聞き覚えがないが、「曽根昌世」の名には知っていた。甲陽軍鑑には曽根昌世が武田信玄から「昌世と昌幸は我が両眼」と称されたと書かれている。ただ、この一節は出展が甲陽軍鑑だけにどれほど信用できるか分からない。
曽根昌世は武田家滅亡する前に徳川家康に内通していた。そして、彼は武田旧臣を諜略し徳川家康に投降するように動いた。その手腕は徳川家康から高く評価されたことは武田
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