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提督はBarにいる。
祝福の杯は蜂蜜酒を
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始める前から存在した訳だ。それも当然、蜂蜜酒を一番簡単に作る方法は、水と蜂蜜を同じ容器に入れて放置するだけ。今でこそ東欧やロシア位でしか楽しまれていないが、その昔は酒といえば蜂蜜酒だったのだ。

「でも、なんでその蜂蜜酒が『花嫁の酒』なんですか?」

「ふふふ、霧島よ。蜂蜜酒とジューンブライドには密接な関係があるんだよ」




 6月に結婚すれば幸せになれると言われているジューンブライド。コレには諸説あるが俺は『ライフサイクル説』を推したい。中世ヨーロッパにおいて、3-5月は農業の繁忙期であり、その月に結婚式を挙げる事を禁じていたとする説だ。そして6月に我慢していた新郎新婦達が一気に結婚するので、6月は街中で毎日のように結婚式があり、纏めて街中から祝福される為、一層幸せになるという説なのだ。

 そしてこのライフサイクルが、ものの見事に蜜蜂のライフサイクルと重なるのだ。3-5月は春……芽吹きの季節。蜜蜂の活動も活発となり、人間達がせっせと農作業に励む傍ら、働き蜂達もせっせと蜜を集める。そして6月、農作業が一段落して初夏の牧草刈りに人手が必要になる前には、蜂蜜がたわわに出来上がっている。そして人々は蜂蜜を採取し、酒を醸し、蜜蝋から作った蝋燭を教会などに寄付して結婚式を挙げ、蜂蜜酒で乾杯して祝宴を催した。そうして嫁を娶って草刈りの季節に向けて人手を確保したのだ。つまり、蜂蜜酒がビールやワインの祖先であり、花嫁を祝福した最古の酒だという訳さ。

「成る程、興味深い話ですね!」

「まぁ、講釈はコレくらいにして乾杯といこう」

 俺はメドブーハの栓を開けると、次々とグラスに注いでいく。中の菌がまだ生きているので微発泡している金色と琥珀色の液体は、照明の光を受けてキラキラと輝いている。

「では、二人の門出を祝して……乾杯」

『乾杯!』

 さぁ、楽しい宴の始まりといこう。

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