冷めても美味しいお弁当講座・メインのおかず編
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俺は俺の執務机に備え付けてあるスイッチを押した。
いつものカウンターバーに変貌した執務室で、エプロンを締める。五月も普段使っているのであろう若草色のエプロンを締め、伸ばしている髪を短く纏めた。
「さて?普段はどんな弁当を作ってるんだ?」
「えぇ……と、豚バラを使った肉野菜炒めとか、卵焼きとか、野菜のおひたしとか…あ、卵焼きだけだと飽きると思ってたまにオムレツにしてみたりしてます」
「あっちゃ〜……」
「え、何かまずい物が入ってました?」
まずいどころか入れない方がいい物のオンパレードじゃねぇか。これは基礎から教えにゃいかんか。
「五月よ。主菜といえば肉・魚・卵辺りがポピュラーだがな、弁当に入れる時にゃ避けた方がいい食材トップ3ってのがあるんだ」
「へぇ、そんなのがあるんですか。それって何ですか?」
「牛・豚の脂身、バター、オリーブオイルの3つだ」
牛や豚の脂身は脂の融点……つまり溶け出す温度が高い。つまり冷めた状態で食べる前提の弁当に入れてしまうと、脂身がラードのように固まってしまいとても不味い物になってしまう。肉野菜炒めに入っていればラードのような脂が野菜に絡み付き、ネトネトとした野菜炒めが出来上がりだ。
バターも牛や豚の脂身同様、冷えて固まればその美味しさは損なわれてしまう。幾ら美味しいからといって弁当に使うのは冷めた方が良いだろう。
最近健康に気遣って炒め物などにオリーブオイルを使う人もいるらしいが、オリーブオイルも固まる温度はサラダ油に比べると高い。特に冬場はカチカチに固まりやすい。パスタソースに小量使う位ならいいかもしれないが、大量に使うのは避けるのが無難だろう。
「そ、そんな……!私ほとんど使ってましたよその3つ…」
五月は愕然とした様子で、今にも膝から崩れ落ちそうだ。
「まぁまぁ、そう気を落とすな。それを正す為に習いに来たんだろ?」
「は、はい……」
「じゃあ早速行くか。実際に作りながらポイントを教えてくぞ」
《ポイント1》肉のおかずなら鶏肉か挽き肉、牛か豚を使うなら脂の少ない部位を!
「ま、さっきの話の通りだな。牛や豚が使えねぇなら鶏肉使え、って事よ」
「そういえばお弁当に鶏肉のおかずって多いですよね。唐揚げとか、照り焼きとか、つくねとか」
「まぁ、昔からの知恵って事だ。……江戸の頃には食べられなかった、って事情もあるがな。んじゃまずは冷めてもジューシーに仕上がる『鶏の照り焼き』を伝授しよう」
《冷めてもジューシー!柔らか!鶏の照り焼き》
・鶏モモ肉:1枚
・醤油:大さじ1.5(下味用)
・みりん:大さじ1(下味用)
・片栗粉:適量
(照り焼きタレ)
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