暁 〜小説投稿サイト〜
提督はBarにいる。
6月第3日曜日・final
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ーなスイーツを選んだモンだな。トライフルとは」

「あら?提督は知ってらっしゃったんですか?」

「一応な。イギリス発祥だし、金剛が一度作ってくれたよ」

 金剛は結婚する前から、午後の休憩のお茶の時間にはかなり力を入れていた。俺としてはコーヒーに軽い軽食かお茶請けがあれば十分だったんだが、妹達や手の空いている艦娘に手伝って貰いながら毎日のように豪勢なお茶の時間を仕立てていたのだが、そんな中でトライフルが供された事があった。

「金剛が作った奴は本格的に自作したスポンジやらゼリーやらカスタードやら使って手間が掛かってたが……」

 睦月型の娘らが作ったトライフルを見ると、よく見馴れたお菓子類が小さくカットされたり形を崩したりして使われているようだ。

「スポンジはカステラやケーキ、カスタードはプリンで代用か」

「う、うん。僕達お料理には自信無かったから……」

「で、でも如月お姉ちゃんがクリーム作ってくれたんだぴょん!」

 取り分けて貰ったトライフルの表面を彩っていたクリームを一口。サワークリームよりは甘いが、ホイップクリームよりかは爽やかな口当たり。

「ヨーグルトクリームとは考えたなぁ、如月」

「あら?もうバレちゃった……つまんないの」

「いや、でもこれはいいアイディアだ。市販の甘い菓子類に合わせる為の工夫だろ?」

 料理は手間暇掛ければ良い、という物でもない。そりゃあ手間暇掛ければ美味い物は出来やすくもなるだろうが、そうとは一概に言い切れない。要は結果的に美味い物が出来上がるかどうかが問題だ。その為に一見手抜きにも見える工夫は、個人的にはアリだと思っている。

「出来ないなりの創意工夫は見事だったよ。そういう工夫は大事だからな」

 戦闘でも創意工夫は重要だ。火力の低い駆逐艦でも、仲間との連携や戦略で戦艦や空母を墜とす事が出来る。戦闘以外の事を学べ、と俺が常々言っているのは戦後の為だけでなく柔軟な発想を産み出すキッカケにもなり得るからだ。

「提督さん、いつも私達を優しく扱ってくれてありがとう!」

「んな事ぁ上に立つモンとして当たり前の事だ。寧ろ俺の方がお前らみたいな小さい女子供に戦わせて、申し訳無いと思ってんだ」

 睦月が述べた感謝の言葉に、俺は日頃抱いている思いを載せて返し、頭を撫でてやる。最初はむずがるように身を捩っていた睦月だったが、しまいにはえへへとはにかみながら大人しく撫でられていた。

「あ!睦月ちゃんばっかりズルい!」

「提督、私達も撫でてよ!」

 遠目に眺めていたのだろう、他の駆逐艦達も撫でてもらおうと俺に殺到してきた。やれやれ、ホントに親父になった気分だぜ。

「わかったわかった、順番に撫でてやるから並べお前ら」
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