6月第3日曜日・15
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取れたまろやかな酸味だ。そこに野菜の甘味と旨味が絡み合って絶妙な味だ。
「うん、初めて食ったがこれも美味いな」
フレンチのラタトゥイユは材料こそ似てはいるが、ここにバジルやオレガノのハーブ類を加えて、ビネガーではなくワインで煮込むのがラタトゥイユだったはずだ。見た目は似ているが全く違った味わいの一品だ。
「美味しかった?なら良かったわね」
「もう、ローマったら。提督に食べて頂きたいと一番頑張っていたのはこの娘なんですよ?」
「ね、姉さん!恥ずかしいから言わないでって……!」
トマトの様に真っ赤になって突っ掛かるローマを、のらりくらりとかわすイタリア。このやり取りが普段の『素』なんだろうな。
「司令、少しよろしいでしょうか……?」
ローマとイタリアの姉妹喧嘩(?)を微笑ましく眺めていると、再び早霜に声をかけられた。
「何だ?改まって」
「司令、こちらをどうぞ……」
早霜に差し出されたのはラッピングされた1本のボトルだった。見た目はワインやリキュールのボトルに近いが、見たことのないラベリングがされている。
「私からの個人的な父の日の贈り物です……」
早霜はそれだけ言うと、俯いてしまった。長い黒髪の隙間から覗く耳が真っ赤に染まっている。
「ありがとよ。早速利いてもいいか?」
「あ、あぁはい。ただ今グラスを出します…!」
少し慌て気味に差し出されたカクテルグラスを受け取る。コルクではなく金属製のキャップを回して開けてやると、そこから漂って来た香気は予想外の物だった。
「……何だこりゃ?日本酒なのかコレ!」
そう、口の開いた瓶の口から漂って来たのは米から作られた甘味を感じさせる香り…間違いなく日本酒の香りだったのだ。
「司令は…秋田の阿櫻酒造、という酒蔵を知っていますか?」
「あぁ、名前位はな」
確か、秋田の横手市にある日本酒の酒蔵なのだが様々なチャレンジをしてユニークな酒造りをしている蔵だと聴いた事がある。
「この『AZAKURA MOTOZAKE』はその阿櫻酒造がカクテルのベースリキュールとして開発した日本酒なんです」
そんな酒があったのか、と正直驚いた。日本酒をベースとして作るカクテルはあるが、カクテルにする前提で作られた日本酒とは恐れ入った。そんなのは見た事も聴いた事もない。
「どうでしょう、私は先に味見して味を解っておりますからカクテルに仕立てて味わって貰う、というのは?」
「あぁ、是非頼む」
カクテル用の日本酒の実力を味わうならカクテルにして味わうべき。至極当然の事だ。俺は先程開けた瓶を早霜に返し、その手並みを拝見する事にした。
「では、始めます」
早霜は
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