暁 〜小説投稿サイト〜
蒼き夢の果てに
第7章 聖戦
第158話 魔が……騒ぐ
[7/12]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
球産の神々によって設定された裏の人格が目覚める事に因ってシャルロット姫は地球世界で出会った神代万結と成る。俺の記憶や感覚が間違いないのなら、夢の世界で出会ったタバサの妹と、地球世界で再会した神代万結。更に、前世で出会ったシャルロットの発する魂の形や雰囲気は殆んど同じ物だった。そして、そうだとすると彼女なら何の触媒を用いる事もなく俺を召喚出来る可能性が高くなるので、これは流石にクトゥルフの邪神。這い寄る混沌や名づけざられし者に取っては余り面白くない展開となる。
 故に、彼女の裏の人格は未だ夢の世界に幽閉されているのでしょう。

 何故ならば、彼女は系統魔法が行使出来ない王家に繋がる血筋の人間。更に、非常に大きな不幸を背負っている人間だから。
 このふたつは、前世の俺が仮定した虚無魔法に魅入られる人間の条件を満たした状態だから。
 このふたつの条件を満たした人間が()と言う、反ロマリア、反ブリミル教となる可能性が異常に高い人間を召喚するのは奴らに取って問題があり過ぎるから。

 大事な時期にハルケギニアから地球に追放されていた事に対して小さく舌打ちをしたい気分。もっとも、向こうの世界に行ったが故に、この世界に訪れている味方の有無に関しても思い出す事が出来たのだと思うと、その回り道も無駄ではなかったと思う。
 自分自身に言い聞かせるような思考。そんな俺の心の内を読み取ったのであろうか――

「妙に余裕がある風を装っているようだが……」

 神経を逆なでするかのような、聞いて居て不快になる声でそう話し掛けて来るジャック・ヴェルフォール卿……と表現するべきか。
 但しこの言葉は間違い。俺たちは余裕がある風を装っている、のではなく、本当に余裕がある。そもそも、この状況の何処にコイツが有利な点があると言うのか教えて貰いたいぐらいだ。

「これから先に何が起きるのかを知ったら、そんな余裕がある風を装う事が出来るかな?」

 相変わらず、妙に不遜な雰囲気で言葉を続けるジャック・ヴェルフォール卿。ただ、これから先の事を心配しなくちゃならないのはコイツの方も同じだと思うのだが。
 何故ならば、ここは敵地の最奥部。RPG的に表現するのなら魔王城の王の間。目の前には敵の首魁の姿が。対して自分自身は、大勢の貴族を盾にしている訳ではなく、何処にも隠れる場所もない大きな回廊のド真ん中でポツンと独りで立っている状態。
 確かにぱっと見ただけならここに衛士の類はいない雰囲気。更に、集められた一山いくらのガリア貴族たちも、普通に考えるのなら魔術師の杖や武器の類は携行して居ないでしょう。
 しかし、奴の目の前には巷で噂されている内容を半分に聞いたとしても、どう考えても普通の人間が熟したとは思えないような仕事を為している英雄王と救国の乙女のひとつがい。

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ