第7章 聖戦
第158話 魔が……騒ぐ
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目的を果たすまで戦争が続けられる可能性の方が高いと思われる。
その時、この聖戦に反対したガリアの貴族の扱いがどうなっているのか。そんな簡単な事が分からないマヌケはこの場にはいないでしょう。
かなり運が良ければガリア滅亡後も無事に生き延びて貴族を続ける事が出来るかも知れない。但し、おそらく戦費の調達の名目で自らの所領で略奪を行われた挙句、自分たちは聖戦の最前線でエルフを相手の絶望的な戦争をやらされる事となる。
こう言う未来が簡単に見えているはず。
しかし、それならばどうする。
一瞬、最後の一押し、更なる仙術の上書きを行うか、それとも、もうひとつ言葉を継ぎ足すか。
或いは――。そう考える俺。
それはほんの僅かな迷い。確か、前世ではこの段階で観衆は熱狂の渦に包まれ、ガリアは聖戦へと一致団結して行く事となったはずなのだが、今回の人生では、そんな些細な部分にも齟齬が発生している。
時間にすれば僅か数秒の逡巡。
その時――
「異議有り」
低く、押し殺したかのような声が辺りに響く。その深き底より発せられたかのような陰気に染まった声がこの空間を支配した事により、今まさに爆発寸前となっていた大きな気配が一瞬、停滞して仕舞う。
その声のした辺りに視線を向ける俺。気分的には最悪の展開に舌打ちをしたい気分で。
俺が視線を向けた先。声が出されたと思しき場所には……。
何時の間に現われたのか。多くのギャラリーから数歩分だけ前に出ている黒のマント姿。頭にはつばの広い帽子。但しそれは多くの貴族が好んで被る羽根飾りの着いたかなり派手目のつば広の帽子などではなく、御伽話に出て来る魔法使いのような帽子。その黒とも濃紺とも付かない大きな帽子を目深に被っているが故に、見た目だけではやや身長の低い男性なのか、それともそれなりの身長を持つ女性なのか判断の付かない人物が存在していた。
外界からは真冬に相応しい弱い陽光。頭上からは科学に裏打ちされた蒼白い光輝に包まれたこの鏡の間にあって尚、この新たに登場した人物の周りには何故か深い闇が凝っているかのように感じられる。
正直に言うと怪しさ大爆発。オマエ、どうやってこの場に潜り込んだのだ、と問いたい気分が百パーセント。
「この呪われた邪教の召喚作業に、偉大なるブリミル神の御加護など存在しない」
かなり耳障りの悪い声。どうも無理に作られた声のようで、コチラの心に働き掛ける力と言う物には著しく欠けているように感じられる言葉。ただ、その立ち尽くす黒い人型の大きさと、その声の発する気配から、この召喚の場に現われたのがおそらくは男性だと言う事だけは分かった。
ただ……。
ただ、奴が口にしたそのブリミル神自体がこのハルケギニア世界に存在している可能性が限りなく低い以上
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