第7章 聖戦
第158話 魔が……騒ぐ
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俺の長広舌が終わった瞬間、それまで少しざわざわした雰囲気を発していた観衆たちから音が消えた。
咳ひとつ聞こえて来ない召喚の場。重苦しい雰囲気と奇妙な緊張が周囲に凝る。
その時、大きく取られた七十二のガラス窓から差し込んで来る陽が深く差し込み、三十六ある金、銀の美術品に対して、この季節に相応しい寂しげな色を着けた。
……そう、確かに今、音は消えている。しかし、これはおそらく嵐の前の静けさ。確かに今は静に包まれているこのヴェルサルティル宮殿鏡の間なのだが、その内側に強い気を孕んでいる事が俺には強く感じられていたのだ
大丈夫。少しの切っ掛けさえあれば、この気はひとつの終息へと向かって走り始める。
現状は暴走と紙一重の感覚。ある意味、危険な兆候と言えるかも知れない。確かに地球世界のフランス人は走り出した後は考えない、などと言われているが、それでもこう言う場合には勢いも重要だと思う。
まぁ、国民が一時の熱に浮かされたとしても、為政者の側が常に自分の立ち位置に対して自問自答を繰り返す冷静な思考を心がけていれば。――常に自分が間違っていないか。高い視点から物事を見つめている事が出来ているのかを問い続けて居れば、間違った方向に大きく傾いて行く。その可能性は低くなる。……はず。
最悪の場合は、その大きな勢いに呑み込まれ、生命を失う可能性もゼロではないのだが。
…………いや、流石にこれは未来を悲観し過ぎか。
そう考え、少し思考の方向を転じる俺。何故ならば、このままの方向で考え続けると、自らがずっとガリアの国政に関わり続けなければならない責任について考えなければならなくなる……様な気がするから。それは色々とマズイ。
それに、俺が居ない間に大きな方向転換を行って居ない限り、今のガリアの戦争税の類は低い。確か地球世界の貴族が支配した時代のフランスに存在した貴族や聖職者に対する免税の特権は、ジョゼフが王太子の時代から徐々に失くされて来た。このことが、王太子ジョゼフとシャルルの王位継承問題の一因……大きな貴族ほど。旧教に属する聖職者ほどシャルルの方を支持する一因となったのも事実なのだが……。
ただ、故にこの聖戦の名を騙った侵略戦争に対処する事に、ガリアの貴族たちが躊躇う理由は低いと思うのだが。
国としてのガリアが負けて失う物は、庶民よりも貴族たちの方が大きいはずだから。
この戦争は基本的にエルフ懲罰軍の編制。異世界より始祖ブリミルが顕われたとされる聖地を違法に占拠したエルフに正義の鉄槌を加え、聖地を奪還する事が主たる目的で有る以上、その事に対して異を唱えるガリアを降伏させた処で、戦争自体が終わるとは思えない。
ガリア降伏の後、更なる戦争。……本来の
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