曙光
治癒の感触
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或る者は、人を許す毅さを。
或る者は、論理的思考を形造る理性を。
或る者は、人を労る優しさを。
(我々も王と共に、キタイへ戦いに参ります!)
戦う意志を持てぬ程、心を折られた戦士達は数万に及ぶが。
エルファの宣誓と共に、記憶が甦る。
心の底から溢れ出した真摯な想い、感情は偽りに非ず。
衝動は無気力と絶望の檻、奸計と陥穽の罠を克服する原動力となった。
豹頭王と共に黒魔道から、中原を護る事を誓った勇者達。
ケイロニアの騎士達は再び、剣を掲げた。
パロ聖騎士団、カラヴィア軍、ゴーラ軍。
マリウスの歌を聴いた人々の瞳に、涙が溢れる。
アモンが操る夢の回廊、心を腐蝕し生きる気力を打ち砕く魔術。
深刻な打撃を被り傷付いた心を癒し、生きる希望を回復させる歌声。
悪夢を統べる女神ヒプノス、魔王子アモンの対極に位置する存在。
心に無限の光を注ぎ込む運命の王子、カルラアの戦士が歌の力を実証した。
アルド・ナリスも流れる涙を拭う事を忘れ、マリウスの歌に聞き入っていた。
異母弟の奏でる豊穣な協奏曲が記憶の扉を開き、封印していた悔恨の感情を甦らせる。
アル・ディーンの真心を射止めた相手、ミアイル公子に対する強烈な嫉妬。
自分を捨て、薄幸な公子と共に生きる事を選択した弟への恨み。
唯一人の弟の帰還を渇望するも、再会の勇気を持てぬ真の理由。
ミアイル公子の暗殺を命じ、アル・ディーンを犯人に仕立て上げた悔恨。
憎まれて当然の命令を下したが故の、消える事の無い罪悪感。
兄弟再会を妨げる元凶、再び捨てられる恐怖に怯える自己防衛本能。
歌声が、優しく語りかける。
君は1人じゃない、僕が傍に居る。
僕は決して、君を見捨てはしない。
力強い歌声が、心の奥底に響き渡る。
歌を聴いていたのは、兵士達だけではなかった。
グインの要請を受けた魔道師達は再び、思念波を同調。
声の届く範囲の外でも、人々の心に歌を響かせていた。
パロ、ゴーラ、ケイロニア、沿海州、草原地方、自由国境地帯。
心話を受け取った各地の魔道師達もまた、マリウスの声を増幅して送り出す。
己の能力に応じ、力の届く限り数多の人々に歌を贈る。
エルファ、サラミス、マルガ、ダーナム、カレニア、マリア。
マリウスの歌が夜の闇を貫き、数多の心に響く。
カラヴィア、サラエム、シュク、アルム、ジェニュア。
クリスタルの一部にまでも、歌は届いた。
心話の連絡網に乗り、様々な場所に暮らす人々の心に、マリウスの歌が響き渡る。
それは中原を黒魔道の闇から解き放つ暁の光、カルラアの翼かもしれなかった。
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