曙光
治癒の感触
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魔王子アモンの術に陥り、心を閉ざした騎士達の前で。
アルド・ナリス最愛の弟、吟遊詩人の若者が歌い始める。
君は、1人じゃない。
僕が、傍に居る。
決して、君を見捨てはしない。
現世への関心を喪い、凍り付いた心の内部に。
マリウスの優しい歌声、キタラの旋律が浸透する。
アモンの施した黒魔道の術を透過して、温もりが伝わる。
氷が、少し、溶ける。
永久凍土の様に、総てを拒絶する鎧。
凍り付いていた感情が、融ける。
暖かい歌声が響き、また少し、氷が溶ける。
感情が甦り、癒され、昇華する。
氷の熔けた分だけ、重量が減る。
バランスが変わり、心が微かに揺れる。
僅かに動いた心の隙間から、歌が浸透する。
温もりが伝わり、凍り付いていた感情が融ける。
様々な感情の解凍、溶融、昇華。
サイクルが繰り返され、少しずつ、闇が薄れる。
感情が昇華し、心の重量が変化する。
眼が見えず、耳も聴こえず、泣く事しか出来ぬ赤子。
無限の闇に包まれた孤独な魂を温め、慰藉を与える《もの》。
不安と恐怖の底無し沼から、赤子を救い出す唯一の手段。
抱き締める事で《心》を癒し、護ってくれる暖かい感触の様に。
マリウスの歌が響き、沁み込んでゆく。
アモンの植え付けた残留思念、罠を匿す幕が揺れる。
透明な実体を持たぬ歌の響き、マリウスの声が《心》を癒す。
赤子を抱擁する暖かい感触の様に、凍り付いた感情を融かす優しい歌声。
音の精霊が《心》を蝕み、縛り、凍らせる頑強な《くびき》を解き始める。
ヤンダル・ゾックの操る黒魔道の術、異次元の微生物。
本人も気付かぬうちに脳細胞を喰い荒し、廃人と化す《胞子》の様に。
心を蝕み、活力を奪い、生命力を萎えさせる魔物の様に。
心の養分を吸い取り、無限に増殖する悪性の癌。
心の闇に潜み、他の部分にも密やかに忍び込み、浸蝕して領域を拡げる《悪の種子》。
無限に繰り返される連鎖を創り、活力を奪う負の思考回路。
人の心を闇に導き、実体を持たず、眼に見えない精神生命体。
誰にも気付かれず、夢の回廊を通じて植え付けられた魔術の種。
アモンの分身が増殖、拡散、浸蝕を繰り返した《心》の裡に。
マリウスの歌が響き、光の波動と化し、呪縛を熔かす。
凍り付いていた感情が蠢き、闇が薄れる。
光の波動が増幅され、拡散して、心を隅々まで照らし出す。
心が温かい感触、太陽の波動で満たされる。
グラチウスが迂闊に暁の魔女、アウラの名を口にした時の様に。
グインの裡から爆発的な《パワー》が溢れ、《生涯の檻》を
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