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提督はBarにいる。
嗚呼、懐かしの烏賊尽くし・その5
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つの鍋を囲んで同じ物を食べるだけで、あんなに暖かい気持ちになれるのだと初めて知ったよ」

 鍋ってのは団欒の象徴だからなぁ。もしかしたらその辺も勘定に入れて、加賀の奴は歓迎会を鍋パーティーにしたのかも知れんな。……おっと、イカが膨れていい感じになってきたぞ。

スープからイカを引き上げて、食べやすい厚さに輪切りにする。パンパンに膨らんだ胴体の中では、米がたっぷりとイカの旨味とコンソメを吸ってふっくらと炊けている。

 イカ飯と輪切りにしたトマトを交互に盛り付けて、仕上げに上からビネガーソースをかけてやり、イタリアンパセリを散らせば完成だ。

「ハイよ、『洋風イカ飯』。トマトと一緒に食べてみな?」

「了解だ」

 最初のおっかなびっくりはどこへやら、グラーフはトマトとイカ飯の一切れを箸でつまみ上げると、一口でその全てを口内に収めた。

「ほっひぇもおいひいろアトミリャール!」

 グラーフ、口の中が一杯すぎてマトモに喋れていない。

「とりあえず口の中に物入れて喋るのは行儀悪いから、飲み込んでから感想は聞くよ」

 俺が苦笑混じりにそう応えると、グラーフはブンブンと首を縦に振って急いで噛み始めた。やがて口の中の物を飲み込んでから、再び口を開いた。

「す、済まなかった。しかしそれくらい早く感想を伝えたい程に美味しかったんだ。まだまだ世界には私の知らない物が沢山あるんだな」

「大袈裟な奴だなぁ、それならもっと食べるか?イカ」

 俺がそう尋ねると、グラーフは首を横に振った。

「そうしたいが、今日はもう満腹だ。またの機会にさせてもらうよ」

 そう言ってグラーフは会計を置いて立ち上がった。

「今度来るまでにもっと刺身や生魚に馴れてくるよ。その時はーー…」

「あぁ、最高のイカ刺し食わせてやるぜ」

「フフ……楽しみにしているよ、アトミラール」

 そう言ってグラーフは、店にきた時とは対象的な笑顔で店を後にした。数ヵ月後、めでたくイカを克服したグラーフがビス子達に巻き込まれ、見事に飲兵衛の称号を獲得したのはまた、別の話。 
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