嗚呼、懐かしの烏賊尽くし・その5
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に炒める。全体に油が回ったら、塩、黒胡椒で味付け。
「アトミラール、いったいそれはどんな料理なんだ?」
「あ〜……ベースは和食のイカ飯って料理なんだがな、ヨーロッパとかの料理で近い物が中々…」
「イカメシ……。メシ、とはライスの事だったか?具と炒めたライスをどうするんだ?」
「あぁ、これを今からイカの胴体に詰めてブイヨンで炊くのさ。工程としてはピラフに近いのか?」
そうグラーフと会話を交わしながら、イカの胴体に米を詰めていく。コツとしては米の炊き上がり時の膨張率を計算して、ギュウギュウに詰め込まない事。そうしないと破裂して、見るも無惨なイカリゾットになってしまうからな。
「なるほど……チキン等にライスを詰めて、炊き上げてピラフにするような感覚か。理解した」
お、それも美味そうだな。今度試してみるか。イカに米を詰め終わったら、爪楊枝で縫い合わせるようにイカの胴を閉じる。
鍋に水、コンソメを入れて溶かし、米を詰めたイカをドボン。蓋をして強めの中火にかける。スープが沸いてきたら火を弱め、時々引っくり返しながらそのまま20分煮る。その間に盛り付ける時にかけるビネガーソースを作る。……と言っても、白ワインビネガーとオリーブオイル、塩を混ぜるだけなんだが。
「それにしても……アトミラールと結婚したコンゴウは幸せ者だ」
「何だ?藪から棒に」
イカの具合を見ていた俺は、唐突にグラーフに話しかけられた。
「だって、アトミラールは日本人だというのに、こんなにも色んな国の料理が作れるじゃないか。日本にいながらにして世界を旅した気分になれるのは、とても幸せな事だと思う」
「まぁ、日本人てのは昔から食にはうるさい人種だからな。それを言ったらグラーフ、お前も中々幸運だぞ?」
「? 何故だ?」
「お前さん加賀と仲が良いだろ?あいつの和食の腕は中々だ。特に煮物は俺より美味いかも知れん」
「そ、そうなのか!カガが作ったナー・ヴェーは美味いと思ったが、やはりカガの腕前はアトミラールも一目置く程だったのか!」
そう言えば加賀がそんな話してたっけな。グラーフが着任した時に、新たな正規空母の仲間として歓迎会で鍋をつついたと。最初グラーフは怪訝な顔をしていたと首を捻っていたが……。
「最初にアカギ達から夕食に誘われた時は何をするのか分からなかったんだ。いきなり『鍋をつつこう』と言われて、何かの黒魔術の儀式なのかと勘繰ってしまった」
そう言ってグラーフは照れ臭そうに頬を染め、枡酒を啜った。成る程な、鍋をつつく、なんて日本語的な表現、来日したての外人に理解しろってのが無茶な話だ。
「しかしあの料理は美味かった……というより、温かかった。仲の良い人間同士が1
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