黄金獅子の下に
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った。連絡を受けたマクシミリアンが烈火の如くまくし立てに来るのが常だった。
現場の者でないと意味がない、という場合でもドックまで来るのは部下だ。
しかも装備や装甲のことではなく、外装の塗装の色のことだという。
航行時には零下の中、戦闘時にはシールドがあっても生半可な環境ではなく、それを考慮した上で、装甲はもちろん、塗装も幾重にも行われる。
敵から目視されるのは接舷されるか、拿捕された時くらいで、色合いよりも頑強さを重視してきた。通信衛星や偵察機を使い、艦橋のスクリーンに映し出された時、軍艦が七色であれば失笑を誘うだろうが、帝国軍の全艦隊に使われている標準色で塗装済みと報告されている。
ラインハルトの旗艦ブリュンヒルトのように、特定の軍人が固有の艦を持つことはあるが、それは稀なことだ。
「上級大将ってのは……偉いのか?」
「偉いに決まっているじゃないですかっ、大将に上級がつくんですよ」
「大将より上なのか?」
「当然じゃないですか」
まるで漫才のようなやり取りだが、二人とも真剣である。
軍服には階級章がついているが、将校だと鼻から考えていないので、見てもいなかったのだ。
「んなこと言われたって、会ったことねえんだから」
「会ったとか、そーゆー問題じゃないでしょう。常識ですよ、常識」
「どうせ俺は学がねぇよ」
「学とは関係ないです」
「さては自分が大卒だからって、俺のことを馬鹿にしているな」
「それは主任の被害妄想です」
「いつ俺が僻んだっていうんだ」
「誰も僻んだなんて言ってませんってば」
「…………おい、お前ら」
話がどんどん自分とは関係ない方向に進むうちに、すっかり怒気が抜かれてしまったらしい。ひょいと二人の襟首を掴む。たいした力は入れてないが、引き離すには十分だった。
「とにかくだ。俺の艦隊は黒なんだ」
「……そうなのか?」
小声でもすぐそばに立っているのだからビッテンフェルトの耳にも当然入っている。
「ええ……」
ほら、ここに、とベッカーに指し示めされた箇所には、ビッテンフェルト上級大将下の艦隊の塗装は黒で行うこと、と明記されていた。ただし欄外の書き添えで、文字も大きくはない。
「……小せぇな……」
「常識だからだ」
ベッカーの不満は文字の大きさに対してだが、ビッテンフェルトは大声でそれに応えた。
このドックでビッテンフェルト率いる黒色槍騎兵艦隊の艦が作られたことがないわけではない。ベッカーが担当するドックで、彼が受け持った艦がたまたまそれ以外のものが続いたのだ。
帝国軍の軍艦の数を考えてみれば不思議なことではない。
ベッカーは作業中の艦には興味を抱いても、仕上がってドックを出てしまえば、その艦が何色であろうと、誰が乗り込んでいようとどうでもよい。自分がかかわ
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