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黄金獅子の下に
黄金獅子の下に
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 先ほどよりは加減しており、爪先立ちになるほどではない。
「おいっ、俺の艦隊、何色に塗りやがった」 
「…………え…?」 
 ベッカー以外が唖然とした表情になった。
「おい……」
 目線は外さないまま、グリムに持っているそれを寄越せと合図する。
「赤くでも塗られていましたかね」
 指先に目玉はついていないとばかりに、ファイルを繰る間、視線は下げられた。
「……んな、わけないだろっ」
 見るだけ無駄だと書類は取り上げられる。ベッカーも本気で確認するつもりがなかったのか、抵抗はしなかった。
「だから嫌だったんだ。こんなちっぽけなところに俺の艦隊を作らせるのは」
「あーあ、仰せの通り、小せえよ、ここはよっ」
「しゅ、主任っ!」
 ベッカー自らが背伸びして、唾がかからんばかりの勢いで言い返す。瞬間目を閉じて顔を背けたのは、実際に飛んでいたのかも知れない。
「だから、なりがでかいだけで中身が空っぽの輸送艦やら母艦はうちのドックじゃあ作ってねえよ」
「主任……それって、母艦作ってる人間が聞いたら怒りますよ」
 グリムの小声は警備員の耳にしか届いていない。
「戦闘の要になる巡航艦の仕上がりは評判がいいし、旗艦だって任されるようになったんだ」
 相手が現役軍人であることを除いても、力では適わないことはわかっている。しかし長年ここで働き、何のコネもないのに主任になったベッカーにも意地とプライドはあった。
 大きくて歴史もあるドックに負けていない自信もある。評価されているのも事実だが、巨大艦を作れるドックを持っていないことも事実だった。
「黒色槍騎 兵といえば黒に決まっているんだ」
「黒?」
 はっとして床のファイルを拾い上げたのはグリムで、ベッカーがそれを横から奪うとパラパラと捲った。
 「ああ……これか」
 目当てのページを見つけたようだ。
「外装なんざ、別に何色だってかまわないだろう? 全艦同じでいいじゃないか。塗装はきちんとやっている。何色だって見えるわけでなし、それともあれか、捕獲された後の識別が楽だからか」
 返答がないのはベッカーの言う通りだからではなく、怒りのあまり声にならないからだ。
「き、貴様……!」
「主任っ!」
 グリムが背後から腕を引っつかみ、さらに力を加えて引き寄せる。
「ビッテンフェルト上級大将ですよ」
「……はあ?」
 ベッカーはのんびりと聞き返した。
 まさか帝国軍の上級大将が前触れもなく、部下も連れず、いきなり一人でドックに来るとは思っていない。それはグリムも同じだった。
 もしもビッテンフェルトの口から「黒色槍騎兵」だから塗装は「黒」と聞かされなければ、思い浮かびもしなかった。
 これまでも何らかのトラブルや行き違いが生じたことはあったが、軍人自らが赴いてくることはなか
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