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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百三十一話 捕虜交換(その2)
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口調は穏やかなものだった。“同盟の方にも受け入れられる”、口調と言い表現と言い、取りようによっては和平を望んでいるようにも聞こえる。亡命者からの情報によれば帝国は同盟を征服するために改革を行なっているという事になる。果たして本当か、亡命者が反帝国感情を煽っていると言う事も有るだろう。確認しなければならない。
「同盟と帝国の間で和平は可能だとお考えですか、ヴァレンシュタイン元帥?」
どう答える……。可能だと答えるか、それともはぐらかすか……。皆がヴァレンシュタイン元帥に視線を集めた。
「私がどう考えているかはご存知なのでは有りませんか、ヤン提督」
「……」
やはりはぐらかすのか……。
「私は宇宙は帝国の手で統一されるべきだと考えています」
「!」
彼は同盟の存続を認めていない、亡命者からの情報は真実だった。応接室の空気が瞬時に重くなった。キャゼルヌ先輩もシェーンコップも強い視線でヴァレンシュタイン元帥を見ている。そしてメックリンガー提督はそんな二人を注意深く見ている、警戒しているのだろう。
「ヤン提督、私はこの宇宙から戦争を無くしたいんです」
澄んだ瞳だった。気負いも野心も無い。本当に心からそう思っているのだろう。もし元帥が野心から統一を望むのなら反発を持っただろう。だが今の自分はそれを持てずにいる。
「和平でもそれは可能ではありませんか」
ヴァレンシュタイン元帥が苦笑を浮かべた。
「可能だとは思いませんね、同盟市民のほとんどが反帝国感情を持っている。彼等が和平を受け入れると思いますか?」
受け入れるだろうか、難しいかもしれない。しかし不可能ではない、帝国が変わったことを市民が認めれば和平は可能のはずだ。目の前の男がそれを認めれば同盟は存続できる。無駄な血を流さずにだ。
「……難しいかもしれません。しかし時間が経てば、帝国が変わったと同盟市民が理解できれば不可能とは思いません」
ヴァレンシュタイン元帥がまた苦笑を浮かべた。
「時間が経てば同盟は国力を回復します。そのとき叫ばれるのは“シャンタウ星域の仇を討て”、そうではありませんか? また戦争が起きますよ、ヤン提督。国力が落ちれば和平を、充実すれば戦争を、返って戦争が長引くだけです」
「……人間が其処まで愚かだと私は思いませんが……」
「百五十年も戦争をしていてですか?」
「……」
何も言えなかった。確かに百五十年も戦争をしているのだ、同盟と帝国の間にある憎悪は私が考えているより大きいのかもしれない。いや、大きいのだろう。同盟市民を分かっていない、トリューニヒトにそう言われたことを思い出した。
「ヤン提督、私はシャンタウ星域の会戦で一千万人を殺しました。辛かったですよ、自分のした事が恐ろしかった。だからその犠牲を無駄にしたくない
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