山雲農園の春野菜スペシャル!その1
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そう言いながら執務室に入ってきたのは武蔵だ。
『要するに、家庭菜園みたいな物か。用地は今設営中の飛行場の一画にするとしても、野菜の世話を出来る人間がいるのか?』
『その点は問題ない。私や大和は昔、乗員が畑を作っているのを見ていたし、他にもそういう者は沢山いる。特に山雲は農家顔負けだ』
『山雲?朝潮型のか?』
『そうだ。今も鎮守府の一画に小さな家庭菜園を作って他の者に配っているが、中々好評なようだぞ?』
この時はまだ武蔵の話を眉唾で聞いていた。完全に信用するには材料が足りなかったからな。
『そうか。まぁ物は試しだ、やってみろ。必要な道具やら苗やらの予算はこっちで出すからよ』
『あぁ、助かる。上手くいったら提督の店にも新鮮な野菜を卸してやるぞ?』
『期待しねぇで待っとくよ』
そうやって始まった山雲主導の農園だったが、意外にも手伝いの希望者は多く、収穫量もかなりの物だった。それからは毎年少しずつ規模を拡大し、今では季節ごとに何種類もの野菜を育てているらしい。どこかのアイドル兼農家も顔負けだ。その恩恵に与って、ウチの店にも毎週野菜が届くようになった、ってワケだ。
「で、支払いは本当にいらないんだな?」
「いりませんよ〜、趣味で作って食べきれないので〜お裾分けしてるんです〜」
「……そっか、なら遠慮なく。んじゃあ明日の夜、いつものようにな」
「は〜い、楽しみにしてますね〜♪」
山雲は金銭を要求しない。代わりに俺は、貰った野菜で料理を振る舞う事にしている。良い仕事には相応の対価を支払って当然、ってのが俺の考え方だからな。
そして、その夜。
「……で、な〜んでお前らもいるんだよ」
「別に問題なかろう?山雲に誘われたのだ」
「そうですよ提督、山雲ちゃんからの折角のお誘いを断ったら失礼だと思います!」
山雲と共に現れたのは大和と武蔵の姉妹だった。聞いた所によると普段から出撃の少ない二人は農園の手伝いを積極的にしているらしいし、自主的に農園の警備もしているらしい。以前は銀蝿しようとする不届き者もいたらしいが、最近はめっきり減ったと聞いていた。
「だってぇ〜、美味しい物は皆で分けて食べた方が良いじゃないですか〜♪」
誘った張本人の山雲はそう言ってニコニコしている。まぁ、本人が納得しているならそれでいいんだが……。山雲が持ってきた野菜、一晩で無くならなきゃいいが。
「さて、と。飲み物は?」
何はともあれBarだからな、とりあえず飲み物を提供してしまってからにしよう。
「私はビールだな。今日も畑仕事で喉が渇いた」
「あ、じゃあ私もビールで」
「じゃあ山雲もおビールで〜」
その瞬間、俺はずっこけそうになった。
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