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歌集「春雪花」
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 虫の音も

  消えて久しき

   枯れ野原

 雪ぞ降りてや

    心ざわめき



 しんと静まり返る夕べ…喧しいほどに響いていた虫の音が懐かしく感じる…。

 目の前の枯れ野原には、もう生命力さえ感じず…過ぎ去る時の早さに居た堪れなくなってしまう…。

 そんな枯れ野に雪が舞う…まるで記憶を消すかのように…。

 きっと彼の記憶から…こんな風に私も消えて行くのだろう…。


 そう思うと、なぜか私の心はざわつき…諦め切れない想いが頭を擡げるのだ…。



 忙しなき

  年も暮れにし

    雪里に

 恋しき君の

    影もなかりき



 慌ただしく駆け抜ける師走…届くはずもない想いを抱え見渡せば、一面の雪景色…。

 四季は巡り、春は必ずやって来ると言うのに…私はいつまでもこの凍てついた風景の中に佇んでいるようで…。

 この街に彼はいない…今年も到頭会えはしなかった…。


 どれだけ待ったとしても、私の中の風景には…彼の姿はないのだ…。




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