未来へのミチシルベ 中編
[2/5]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
。そして、問題はこのあとだ」
そう言うと、一つ咳払いをする。
「突発性拡張型心筋症の発病。事件で親や友人を亡くす。そして、心移植による身体へのストレス。これが一気に重なり、レイ少年は無意識に心のダメージを回避しようとした。それにより、解離性同一障害になったのだと思う。
それだけではない。レイナさんが言っていた、レイ少年らしくない言動や行動が起きた原因は、同じく心のダメージを回避しようとした結果、別の人格が生まれたんだ」
タカナシ院長の言葉に、俺達は息を飲む。俺は自分の胸に手を当て、鼓動が速く打っているのを感じる。
「俺の、いや………………この心臓のドナーの、名前を教えてくれ」
「…………少し待ってくれ」
そう言うと、資料らしきものが纏められていた紙の山から探し出す。
「あったぞ。君の心臓のドナーの名前は、レイエン ユキヤだ」
「レイエン ユキヤ…………」
それが、この心臓の持ち主………………。
「これで、レイ少年について知っていることは終わりだ。何か質問はあるか? 」
「あっ、じゃあちょっといいスか? 」
ヒメラギが手を上げ言ってきた。
「なんだ? 」
「その事件の犯人って、結局誰なんスか? 」
その言葉に、タカナシ院長は眉をピクッと反応した。
「…………私も詳しくは知らない。だが、レイ少年だけが生き残ったが、レイ少年が犯人ではないことは確かだ。そして、残念ながらこの件に関しては公にされていない。私にも調べようはない」
「そうッスか…………いや、わざわざどもっす」
「いや、大丈夫だ。他に、質問がある者はいるか? 」
今度はアマネが手を上げ、質問した。
「あの…………どうすれば、カグラ君の解離性同一障害が治るんですか? 」
「申し上げにくいが、解離性同一障害は簡単に治るものじゃない。なぜなら、それはもはや一人の人格として存在してしまっているからだ。
その人格も、レイ少年を形作っている。その人格を消すと言うのは、極めて困難だ。存在そのものが消えると同義だからな。そして、その人格が無くなれば、自然と今の人格も崩れる危険性がある」
「そんな…………」
「だが、だからと言って方法がないわけではない。受け止めるんだ。レイ少年も、ここにいる皆も。解離性同一障害とはいえ、精神病の一種だ。回りの環境も良くなれば、自然と良くなっていく」
「っ───はい! 」
アマネは力強く返事をし、一瞬だけ俺の事を見てきた。
「さて…………レイ少年の症状も、事件の事も、そして治療法も話した。他に聞きたいことはあるか? 」
「いや、もう充分だ。ありがとう、タカナシ先生」
「気にする必要はない。これも君達子供達の、未来のため
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ