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魔法少女リリカルなのは 〜最強のお人好しと黒き羽〜
第二十四話 一つの決着
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の質問だったが、どうやら応答ができるくらいの余裕はあると理解し、すぐに高町たちに応援を呼んだ。

 あとはジュエルシードを回収すれば取り敢えず終われる。

 アマネと黒鐘はそう思い切って、気を緩めた――――緩めてしまった。

「まだ……まだだぜぇっ!!」

「ッ!?」・《ッ!?》

 倒したはずの存在の声に、一人と一機は脳裏に『諦め』が過る。

 海の方を見ればバリアジャケットがボロボロになりながらも、武器である刀の刃が欠けながらも、諦めず殺意に満ちたイル・スフォルトゥーナが立っていた。

 黒鐘の全力をもってしても倒れない相手。

 人では足りない、人知を超えた狂気。

「くっそ……っ」

 黒鐘は下唇を強く噛み締める。

 もはや、両手両足に力は入らない。

 残り僅かな魔力では、恐らくイルが放つ一撃を防ぐほどの障壁は張れない。

 彼一人では、この状況を超えることができない。

(高町や雪鳴達を呼ぶか……いや、それはできない)

 助けを呼ぶと言う選択はできなかった。

 眼前の敵は、間違いないなく人を殺めることができる。

 それは人を傷つけることと同じほど簡単に。

 夏場、自分の身体に飛びつく蚊を潰すほど簡単に。

 あっけなく、簡単に、迷いなく、殺す。

 それがイル・スフォルトゥーナと言う少年なのだ。

 ならば彼女たちを巻き込むわけにはいかない。

 彼女たちは生きなければいけない。

 沢山の大切な人がいるのだから、生きなければいけない。

 対して自分は?

 家族はいない。

 姉も、目覚める気配がない。

 孤独の人間が一人死んだ所で、変わらないだろう。

 そう……だから、諦め――――、


「――――なに湿気たツラしてんだ坊主」


「え……!?」

「あぁ?」

 黒鐘の正面に立つ、一人の男性。

 全身黒のスーツ姿ながら、大柄で筋肉質なのか腕や太ももの部分は筋肉の見える体格の男性は、黒鐘を庇う形で立ち、イルを威嚇する。

「お前さんに提案が一つあんだが……ここは一旦しまいにしてはくれないか?」

「何言ってんだおっさん……そんなの俺が――――!?」

 邪魔が入った。

 そう思ってイルはその相手を睨み、攻撃しようとするが――――動きを止めた。

 いや、止めるなんて考えるよりも先に体が、本能が停止することを選んだ。

 そうしてしまうほど、男性が発していたオーラが強烈だったのだ。

 黒鐘とも違う、圧倒的にして濃厚なまでの存在感。

「頼むよ。 ここは俺に免じて、お開きってことで」

「……チッ」

 舌打ち交じりに、イルは武器を消し、殺気も消した。
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