第二章
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着た、そしてその浴衣を見回しながらこんなことを言った。
「淡い青の地で花柄で」
「よく似合ってるわ」
「そうなの、ただね」
「ただ?」
「ちょっと丈が」
足首が完全に見えている、美咲はそこも見て話した。
「短いわね」
「そうね、あんた急に背が伸びたわね」
「うちが伸びたくて伸びたんじゃないけれど」
「女の子はこの時期すぐに大きくなるのよ」
小学六年位の時はというのだ。
「だからね」
「この前買ってもらった浴衣なのに」
「もう丈が短くなったのよ」
「困ったわね」
「まあそれ位短くても別にいいわ」
「いいの?」
「最近ミニスカートの浴衣があるでしょ」
夢乃が言う浴衣はこうしたものだった。
「そういうのでもないから」
「いいのね」
「そうよ、それでスタンガンとかはね」
護身具はというと。
「持っていきなさい」
「それは忘れないで」
「あと蚊もね」
夢乃は娘に夏に用心しないとならないものについても話した。
「注意しなさい」
「蚊ね」
「そう、スプレーしていきなさい」
「何か何もかも注意しないといけないのね」
「夏の夜はそうなの」
「変な人もいて蚊もいて」
「そんな中に入るから」
だからだというのだ。
「用心に用心を重ねてよ」
「出て行かないといけないのね」
「蚊にも刺されたくないでしょ」
「刺されたい人なんていないわよ」
美咲は母にむっとした顔で言葉を返した。
「そんなの」
「そうでしょ、だったらね」
「蚊にも気をつけて」
「そう、行きなさい」
「わかったわ、じゃあスタンガンとかを持って」
「スプレーもしてね」
「行ってくるわ」
お洒落だけでなく用心もしてだ、そうしてだった。
美咲は家を出た、外はまだ明るかったが祭りが行われている神社のところに着くとその明るかったのが急にだった。
暗くなってきた、それで出店が並んでいるそこの入口でだ。
待ち合わせをしていた親に内緒で付き合っている同じクラスの小野田翔太、小学生だがしっかりとした体格で健康的な黒髪としっかりした眉を持つ彼に会うとすぐにこう言った。
「もう暗くなってきたわね」
「七時近くだからな」
翔太は美咲に微笑んで答えた。
「だからな」
「言っても仕方ないわね」
「そうだろ、それに暗くないとな」
「夜じゃないっていうのね」
「何か面白くないだろ」
「そうね、言われてみればね」
「これから花火もあるしな」
打ち上げ花火、それもだ。
「夜じゃないと駄目だろ」
「そうね、花火はね」
「昼に花火あげられてもな」
「見えないわね」
「そうだろ、だからこのお祭りも夜なんだよ」
夜に行われるというのだ。
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