第二章
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二人はテントを立て終わると萌葉を連れて三人でキャンプ場である野外活動センターの中を歩いた。とはいってもだ。
山道といっても決められた道だ、その道を歩いた。耕太はその道の中を進みながらだ。
妻がしっかりとその手を握っている娘にだ、笑顔で言った。左右に草木が茂っている土の道を進みながら。
「こんな道は知らなかっただろ」
「うん」
その通りだとだ、萌葉も答えた。
「だって街にはないから」
「こんな道はな」
「こんなに草や木がある場所も」
そこもというのだ。
「なかったわ」
「そうだよな」
「こんな道はじめて」
萌葉はこうも言った。
「学校の遠足とかでも」
「なかったんだな」
「牧場や公園は言ったわ」
遠足でというのだ。
「けれどこうした山はね」
「そうだな、けれどな」
耕太は萌葉に話した。
「こうした場所もあるんだ」
「そうなのね」
「そうだ、そしてだ」
「そして?」
「帰ったら凄く美味しいものを作って食べるからな」
「凄く?」
「バーベキューだ」
「あっ、バーベキューなら」
その料理を聞いてだ、萌葉はすぐにだった。父に明るい顔と声で答えた。
「私知ってるわ」
「そうなんだな」
「聞いたことがあるわ、お外でお肉やお野菜を焼いて食べるのよね」
「ああ、そうだ」
「それを食べるのね」
「お昼はな」
「そう、わかったわ」
確かな声でだ、萌葉は答えた。
「じゃあお昼は」
「三人で食べるぞ」
「バーベキューを」
こうしたことを話してだ、そのうえでだった。
三人で山道を進んでいく、途中蛇が出たが。
それでもだ、円香は萌葉にすぐに言った。
「いい?近寄らなかったらいいの」
「蛇が出ても」
「そう、蛇は毒がある蛇でもね」
それでもというのだ。
「近寄らないとね」
「いいのね」
「そう、蜂もよ」
「近寄らなかったらいいの」
「それで安心していいから」
だからだというのだ。
「それだけでいいから」
「怖くないのね」
「危ないものには近寄らないといいの」
「それじゃあ」
「そう、通り過ぎていくから」
見れば青がかった黒い色の蛇だ、アオダイショウである。円香は娘の手を握ったままその蛇が家族の目の前を過ぎていくのを見ながら言うのだった。
「それにあの蛇はアオダイショウよ」
「アオダイショウ?」
「毒のない蛇だから」
「毒がない蛇もいるの」
「そうよ、マムシは毒があるけれど」
それでもというのだ。
「アオダイショウは毒がない蛇なの」
「そうなのね」
「そうした蛇いるから無闇に怖がるより」
「近寄らないで」
「目の前にいる蛇がどんな蛇かをね」
それをというのだ。
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