第二十五話 最後の言葉その十四
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「貴女達ですね」
「はい、そうです」
「そうですか、では」
「お姉様も飲まれますか?」
葡萄酒に薔薇の花びら、三色のそれを入れてというのだ。
「そうされますか」
「いえ」
マイラはマリーの問いに無表情で答えた。
「それはです」
「されませんか」
「入れるとすれば一つだけです」
「といいますと」
「私の薔薇を」
「黒薔薇をですか」
「それを入れます」
それならばというのだ。
「黒薔薇のそれを」
「そうですか、その薔薇を入れられてですか」
「飲みます」
こう言うのだった。
「そうさせてもらいます」
「わかりました、では」
「宜しいでしょうか」
マイラはここで控えていた侍女の一人に顔を向けて声をかけた。
「この度は」
「はい、それでは」
「葡萄酒に黒薔薇の花びらを入れて」
「そのうえで、ですね」
「飲ませてもらいます」
こう告げたのだった。
「その様に」
「それでは」
「あの、宜しければ」
マリーはマイラが侍女との話を終えた時にあらためて彼女に声をかけた。
「私と共に四色の」
「貴女も黒薔薇をですか」
「飲ませて頂きますが」
「そして私もですね」
「そうされることは」
「しません」
マイラの返事は取り付く島がなかった、そうした返事だった。
「私は黒薔薇だけで充分です」
「そうですから」
「貴女がそうしたいのならそうしなさい」
止めることはしない、そうした返事だった。
「一向に。ですが」
「三色の薔薇はですか」
「そうです」
やはり口調は変わらない、そこにある心も。
「私は」
「左様ですか」
「これでいいのです」
黒薔薇のみでというのだ。
「充分です」
「そうなのですか」
「そうです、では」
「これよりですね」
「共に飲みましょう」
微笑まずにだ、マリーに言った。
「葡萄酒を」
「それでは」
「二人で」
「二人で、ですか」
マリーは沈みかけた、だが。
今のマイラの言葉に沈みかけた顔を上げてだ、そのうえで彼女に問うた。
「飲むと」
「今私達は二人ですね」
「だからですか」
「はい、二人でいますから」
「私達二人だから」
「そうです」
その通りという返事だった。
「私と貴女だからです」
「そうですか、それでは」
「共に飲みましょう」
「わかりました」
マリーは姉の言葉に微かに微笑んだ、そして二人でそれぞれの薔薇を入れた杯を打ち合わせてから飲んだ。
そしてだ、食事の後で。
マイラはマリーにだ、別れる時に言った。
「また」
「再びですね」
「機会を見てです」
そうしてというのだ。
「また共に食べ飲みましょう」
「そうして頂けますか」
「貴女がよければ」
こうマリー
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