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非日常なスクールライフ〜ようこそ魔術部へ〜
第44話『最強と最恐』
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諦めて、何度それを振り払ったのかは数え切れない。


「行かなきゃ」


彼がいなくなったのは路地裏。
まだそこを脱していない可能性もあるが、脱していたとなればそれこそ危険だ。
ウォルエナは大通りに集っているし、いくら晴登でも数には太刀打ちできまい。

ユヅキの目的は、晴登を見つけて一緒に王都を脱出すること。当然、ラグナも一緒にだ。
だから言ってしまえば、入れ違いが最も避けたい事態。
せめて王都にいるのか、外にいるのかがわかれば気が楽なのに。


「下手に動けないから、それは厳しそう…」


ただでさえ広大な王都。その状態での人探し自体にも無理があるが、更に障害が立ち塞がるとなると手の施しようがない。
何か、手がかりはないだろうか。


「・・・こうなったら」


そう考えて、ユヅキはあることを思いつく。
少し離れているが、あそこならもしかしたら・・・


決意したユヅキの行動は早かった。
ただ必死に、希望だけを目指して走る。


走って、


走って、


走り続けて・・・



そして、ラグナの店の前に立っていた。


幸運なことに、道中はウォルエナに襲われずに済み、ノンストップでここまで駆けてこられた。
乱れた息が整うのを待たずに、ユヅキは扉を開けて中に入る。



──もちろん、誰もいなかった。

ユヅキは肩を落として、その場で立ち尽くす。

晴登とラグナ。2人との関わりが最も深いこの場所。ここなら何か、ヒントがあると祈ってしまった。
当然、そんなものがある訳がなく、自分は藁に縋っているのだと思い知る。

一刻も早く晴登とラグナを見つけたい。
全包囲という状況になった今、2人は簡単には逃げ出せないでいるはず。きっと王都のどこかにいるのだ。


「でも、もう手がない…」


自分だけの脱出なら、まだ可能性はある。しかし、それを選択することはできない。
かと言って、晴登やラグナは見つからないし、何より安否もわからないのだ。

数多の時計がカチカチと、規則的に音を立てて絶望をカウントしているのを、ユヅキは耳に残しながら考え込む。
静寂とも呼べない静寂が、場を席巻した。


──しかし、ある存在がそれを打ち壊す。


「すいません」

「!?」


不意に後ろから聞こえた声に、ユヅキは反射的に振り返る。
そして視界に入った人物には、見覚えがあった。


「何で…?!」

「いやいや、忘れ物を取りにね」


ユヅキが発した疑問に、その男性は笑顔で答える。
寸分の醜さもない整った顔立ち・・・間違いなく、昨日に時計の修理を頼んだあの男性だ。

知り合いということもあり、騒いだユヅキの
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