第44話『最強と最恐』
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席巻し、人々を続々と喰らっていた。悲痛の叫びが晴登の耳に深々と突き刺さる。
もはや「ヤバい」としか形容できない。たまらず晴登は目を背ける。
「このウォルエナの多さだと、確かに王都の外は無理があるな。アランヒルデさんの言う通り、王城に向かおう」
晴登はなるべく下を見ないように辺りを見回し、王城の位置を確認。中心にある上に大きいから、よく目立って助かる。
距離は1kmはあるだろうか。だが躊躇っている時間はない。
「ここも魔術の出番だ!」
思い立ったらすぐ行動。別に流儀でも何でもないが、時間が惜しいのだ。
晴登は少女をなるたけ大事に抱え、追い風を使って文字通り風の如く屋上や屋根を駆けた。
大通りに沿うように連なる建物。高さはバラバラだが、晴登は遠慮なしに跳び回った。
そして、走り始めて3分くらいだろうか。ようやく王城の近くまで辿り着く。幸運なことに、この辺りにはまだウォルエナは到達していないらしい。
見回してみると、避難所と思われる巨大な体育館のような建物に、騎士が人々を誘導していた。
晴登はそこに近づき、騎士の1人に声をかける。
「すいません、この娘をお願いします」
「あぁわかった。君も早く中に」
「いえ、俺はまだやることがあるので」
「え?」
晴登の予想外の返答に、少女を手渡された騎士は疑問符を浮かべている。
理由は言った通りだ。まだ晴登は避難できない。
「おにぃちゃん?」
「……っ」
そのとき、騎士に抱えられていた少女がうっすらと目を覚ましてそう言った。……その声でそう呼ばれると、思わず智乃と錯覚しそうになる。
晴登はその頭を優しく撫でて、微笑んだ。
「お兄ちゃんの心配はしなくていい。君は生きることだけを考えて」
晴登はそれだけ言い残し、背中を向けて走り去る。騎士が呼び止める声が聴こえたが、構わずに走った。
晴登にはユヅキを探すという使命が残っている。
そのために、晴登は再び絶望に足を踏み入れた。
*
「大丈夫ですか?!」
「あぁ…すまないね」
「大丈夫ですか?!」
「…何とか」
「大丈夫ですか?!」
「ぜぇ……ぜぇ……」
「大丈夫で──」
このやり取りを何度繰り返したことだろう。
早く晴登を見つけたいが、時々見かける人々を放っておけないというジレンマ。といっても、できることは励ますことだけなのだが。
逃げ惑う人々、隠れる人々、抗う人々。色々な人たちを見た。
「ハルト…」
しかし、そんな少数の生存者を見つける中、多数の死体を見た。それらを見る度に、最悪の絵面が頭に浮かぶ。
何度
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