第44話『最強と最恐』
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った?」
*
「ハルト?! ハルト?!」
ひとしきり叫んだが、応答はない。もしかしたら、この辺にはいないのかもしれない。
荒い呼吸を繰り返しながら、ユヅキは駆ける足を止めた。
「どこに行ったの…?」
所在や安否が気になるが、それよりも理由だ。
先程、何かを見つけたのか、違う道に走り去った晴登。
あの必死そうな表情を見て、追いかけるのを一瞬躊躇してしまった。それが、ユヅキが晴登を見失った原因だ。
それにしても、晴登は何を見たのだろうか。ユヅキが横目に見たときは何もなかったはずなのに。
「うぅ…わかんない…」
謎に包まれてよくわからない。
こんな気分は、以前に晴登から身の上話を聞いたときに味わった。
自分の知らない領域。それは難しく、理解し難いものだ。
今まで2日を一緒に過ごしたが、晴登はこの世界の人間じゃないと思い知らされる時が何度かあった。
そして、その瞬間から悟っていた。晴登が故郷へ帰れば、また自分は1人なのだと。
いくら嫌だと願っても、それは叶わないとわかっている。だからせめて、いい思い出を作りたい。
あと1日なのだ・・・それなのに・・・
「ハルト…」
ユヅキは途方に暮れ、路地裏をさ迷い続けた。
*
「くそっ、ユヅキ…」
ユヅキの探索を始めて10分は経った。
なのに、目的を達することも、裏路地から出ることさえも叶わない。避難が遅れれば遅れるほど、それに比例して生存率も下がるというのに。これではラグナの意思も、アランヒルデの防護も無駄になってしまう。
「それだけは、勘弁だ…!」
晴登は路地裏の出口を探して奔走する。
少女はまだ目覚めない。好都合だ。
──魔術は節約。
ユヅキから言われているが、先程のように襲われてしまえば使わざるを得ないし、やはりここからの脱出も不可能なのだ。
「やってやるさ!」
晴登は頃合いの壁を見つけて立ち止まる。これなら届くだろう。
軽く膝を曲げ、足の裏に力を集中させた。自分を押し出すようにと、イメージに合わせて魔力を練り上げ・・・
「よいっ、しょぉぉ!!」
目一杯の力で地面を蹴り上げ、それに合わせて力を解き放つ。すると、身体はロケットのような勢いで空に跳んだ。
乗る予定だった屋上を遥かに越え、王都を囲む壁までも見渡せるくらいの高さに。
「やべ、飛びすぎ!?」
慌てて体勢を立て直そうとするも、空中で身動きなどとれない。まして少女を抱えたままではなおさらだ。
しかしなんとか晴登は、魔力を使って風のクッションを展開し、屋上に着地する。
「あぁ…キツい…! ヒヤッとした
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