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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百三十話 捕虜交換(その1)
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だ。

ヴァレンシュタイン元帥が大広間に現れたのは十五分ほど経ってからだった。元帥が現れると周囲からざわめきが起こった。特に女性士官から“可愛いわね”、“優しそう”という声が聞こえる。ポプラン少佐が“やれやれだね、シャンタウ星域ではもう少しで殺されかかったのに”とぼやきコーネフ少佐が肩を竦めた。視界の隅ではヤン提督とメックリンガー提督が立ち上がっている。

元帥の背後を何人かの帝国軍人が歩いてくる。周囲を警戒しているから護衛だろう。ヴァレンシュタイン元帥は思ったより小柄で華奢な感じの人だった。帝国元帥の証であるマントとサッシュをしている。マントは黒、サッシュはマントよりは少し明るいけど黒っぽい色だ。黒髪、黒目、軍服も黒、黒一色の中で金色の肩章がよく映えている。手には書類を持っていた。マスコミが写真を取っている。フラッシュが元帥を包むのが見えた。

調印式用のテーブルに近付くとメックリンガー提督が敬礼をしつつ少し後ろに下がった。ヴァレンシュタイン元帥がメックリンガー提督に答礼しつつヤン提督に近付く。そしてヤン提督と敬礼を交わした。ヤン提督は少し緊張気味に見えるけど、ヴァレンシュタイン司令長官は穏やかな笑みを浮かべている。周囲を同盟の軍人に取り囲まれているのに怖くないのだろうか……。

ヴァレンシュタイン元帥とヤン提督は互いに席に着くと書類を交換した。そして捕虜交換の証明書にサインをした。サインが終了すると互いに使ったペンを交換して握手をしている。二人とも表情に笑みを浮かべている。その瞬間に無数のフラッシュとシャッター音が大広間に溢れた。多分新聞の第一面はこの写真だろう……。



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