暁 〜小説投稿サイト〜
銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百三十話 捕虜交換(その1)
[5/6]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
。皆元帥閣下のことを想っている」
そう言うとメックリンガー提督はクスクスと、そして最後は大きな笑い声をあげた。


宇宙暦 797年 12月25日    イゼルローン要塞 ユリアン・ミンツ


ヴァレンシュタイン元帥の艦隊がイゼルローン要塞にやってきた。要塞の外にはヴァレンシュタイン元帥の艦隊、メックリンガー提督の艦隊、合わせて三万隻に近い艦隊が展開している。僕は捕虜交換の調印式が行なわれる大広間にいるけど、大広間のスクリーンには大艦隊が映っている。

イゼルローン要塞の中は緊張に包まれている。大艦隊に包囲されている事も有るけど、これからヴァレンシュタイン元帥がこの要塞の中に来る所為もあるだろう。大広間の正面には調印式のためのテーブルが用意されている。マスコミも大勢来ている。皆ヴァレンシュタイン元帥を間近に見る事が出来る事に緊張し興奮している。

艦隊の中から一隻の艦がイゼルローン要塞に近付いて来た。スクリーンがその艦を映す。漆黒の戦艦、細長い艦首と滑らかな艦体、総旗艦ロキだ。その姿に大広間がどよめいた。

魔神ロキ、帝国軍宇宙艦隊司令長官の地位に有るのに悪魔神の名を持つ艦を旗艦にする。それだけでもヴァレンシュタイン元帥は一筋縄では行かない人物だと思う。メックリンガー提督は誠実で信頼できると言っていたけど、それだけじゃないはずだ。

ヤン提督が大広間に現れた、メックリンガー提督も一緒だ。二人とも正面に用意されたテーブルに座るとスクリーンに目を向けた。先日メックリンガー提督が言っていた三倍の兵力を以って戦え、という事をヤン提督に伝えるとヤン提督は押し黙ってしまった。“高く評価されてるんですね”と言っても変わらなかった。黙って紅茶にブランディーを入れて飲むだけだった。

「やれやれだな。こっちの気も知らないで暢気に……」
スクリーンを見ていたポプラン少佐が呟いた。どういうことだろう? 僕の疑問に答えてくれたのはコーネフ少佐だった。
「今頃はローゼンリッターが砲手を監視しているだろうね。間違っても総旗艦ロキを砲撃しないように」

「そんな事、有るんですか?」
「冷酷な謀略家、ヴァレンシュタインだからな。恨み骨髄さ、有り得ない話じゃない」
「大丈夫だよ、そんな事するのは此処にいるお調子者か、考え無しの阿呆だけだ。調印式に来た相手を吹っ飛ばすなんて事したら捕虜交換がぶっ飛ぶだけじゃすまない。帝国軍はイゼルローン、フェザーン両回廊から攻め込んでくるからね」

コーネフ少佐がそう言うとポプラン少佐は“念のためだ、間違いの無いようにな”と言った。スクリーンには要塞に近付く総旗艦ロキが映っている。要塞のメイン・ポートのゲートが開いた。そしてロキが港内にゆっくりと入っていく。いよいよヴァレンシュタイン元帥を見る事が出来る、楽しみ
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ