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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百三十話 捕虜交換(その1)
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ユリアンの質問にメックリンガー提督が笑顔で答えてくれた。本当に嬉しそうな笑顔だった。

「メックリンガー提督、ヴァレンシュタイン元帥はどんな方なのでしょう?」
「どんな方か……。君は、いや同盟の人は元帥をどう見ているのかな?」
ちょっと悪戯っぽい笑顔を浮かべながら逆に問いかけた。

ユリアンはちょっと困ったようだった。まあ気持は分かる、同盟ではヴァレンシュタイン元帥の評判は悪い。油断できない冷酷な謀略家、シャンタウ星域の虐殺者、皇帝に取り入る奸臣等だ。ユリアンはすこし躊躇った。

「御気を悪くしないで欲しいのですが、元帥の評判は同盟では良くありません。ユリアン君が戸惑っているのもその所為でしょう」
「分かっていますよ、准将。遠慮は要らないよ、ユリアン君。我々は暴虐なる銀河帝国の軍人なのだからね」
そう言うとメックリンガー提督はクスクスと笑い声を上げた。

「確かに元帥の事を悪く言う人もいます。でもヤン提督は元帥のことを恐ろしい相手だと言っていました。多分、褒め言葉なんだと思います」
妙な表現だが褒めていると思ったのだろう。メックリンガー提督は気を悪くした様子も無く頷いた。

「恐ろしい相手か……。ヴァレンシュタイン元帥もヤン提督の事を恐れているよ。私達に互角の兵力で戦うな、ヤン提督と戦うには三倍の兵力が要ると言っている……」
三倍の兵力? そんな事を……、俺とユリアンは思わず顔を見合わせた。

そんな俺達の様子が可笑しかったのかもしれない。メックリンガー提督は笑いながら話し続けた。
「此処には皆が来たがった。ヤン提督はどんな人物なのかとね。皆提督に会って提督を知りたがったんだ。私が選ばれたときには皆から羨ましがられたよ」
「……」

俺達が黙っていると、メックリンガー提督はもう一度笑い声を上げた。
「私自身ヤン提督の恐ろしさは分かっている。第三次ティアマト会戦ではもう少しで完勝できるところだったのに上手くしてやられた。あの時は悔しさよりも恐ろしさを感じた……」

何となく話題を変えたほうが良いような気がした。
「ヴァレンシュタイン元帥の人となりは如何です」
「誠実な方です、信頼できる方ですよ、元帥は」
即答だった。謀略家の元帥が誠実? 俺は訝しげな表情をしたのだろう。メックリンガー提督はこちらを見てまた笑い声を上げた。

「同盟では元帥は謀略家と言われているようですがそれは勝つためです。時々心配になりますよ、無理をしているのではないかと」
少し遠くを見るような眼で答える。その姿から彼がヴァレンシュタイン元帥のことを本当に心配しているのが分かった。

「……想っておられるのですな」
「想っている? 」
意表を突かれたのだろうか?
「想っている……、そうですね、想っていますよ我々は……
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