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鋼殻のレギオス IFの物語
第二章 【Nameless Immortal】
参 振り下ろされた兆し
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に移る光景を脳裏に刻むように静かに見つめ続ける。

 実際の所、生徒達からしたら校舎に近くて身近なため、有名ではあるが特に名所といったほどではない。
 内部に忍び込み時間を変えようとして謹慎を受けた生徒も何人かいる。
 だがアンティークなデザインと単純な大きさが作り出す何となくの特別感がある。

「うん、満足したよ。そろそろ行こうじゃないか」

 朗らかでどこか寂しげな笑みをカノンは浮かべる。
 停留所へ向かうため三人は来た道を戻り始める。
 今日はこれで終わり。後は帰るだけだ。夕焼けさえも暗くなり始めている。
 
 停留所の手前でカノンが止まる。右足の調子を確かめるように軽く動かす。
 ポシェットから出した飴玉を口に含み再び歩き出す。

「どうかしたのか?」
「ちょっと疲れちゃったみたいだね。心配ありがとう」
 
 三人は停留所に着く。時刻表を見れば次の路面電車はもう少しのようだ。
 ここで乗るのはカノンだけだ。各々の帰宅先は大きく離れているため、停留所も別のを使わなければいけない。
 数分を待つため停留所の中に入って三人はベンチに座る。

「二人とも……正確には三人だけど、今日はありがとう。御蔭で助かったよ」
「気にしないでいいよ。こっちとしても口を噤んで貰うわけだし」
「レイフォン、悪い言い方をするな。話し合いによる和解というべきだろう」

 煙に巻く言い方に小さく笑う。

「ふふ、そうだね。けどあれも良い縁だったとボクは思うよ。昨日から色々と話せてボクの中に君たちを知れた。多くを見れて、前までとは違うボクになったよ。話し足りなくもあるけれど」
「明日の観戦もあるからその時だな。最も、私はいないが」
「そういえば明日もあるんだっけ。対抗試合の観るの久しぶりだな」
「ボクも楽しみさ」
 
 音が鳴り路面電車が到着する。自動的にドアが開く。
 カノンが立ち上がる。他二人もベンチから腰を上げる。
 最後にとカノンが二人と握手し、レイフォンの掌に張られた絆創膏に気付く。昨日の怪我によるものだ。既に完治しているが、朝の段階で貼っていたのがそのままになっていた。
 小さく「ごめんね」と言ってカノンの柔らかな手がレイフォンの手を強く握る。そして離される。

「さようなら。今日は楽しかったよ。また、明日のボクによろしく」

 寂しげに告げ、手を振ってカノンが車内に乗り込む。ドアが閉まり車体が発進する。
 そのままカノンの姿は見えなくなって行った。
 
「私達も解散するか。……どうした、手を見つめて」
「いや何となく気になって。まあいっか」

 レイフォン達は停留所を出る。

「ここで解散だな。……そう言えば今さらだが、二輪は平気なのか?」
「直ぐには無理だけど、僕に関して
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