第二章 【Nameless Immortal】
参 振り下ろされた兆し
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んなに可愛いのに、何でだろうね」
「僕に聞かれても。お金がかかったとか、面倒だったとかじゃない? それか眼」
カノンが猫の顎を触りながらその顔を見る。瞳は左右で色が違った。
一方が黄色で他方が単青色。所謂オッドアイだ。
「希少価値とかで人気あるけど、オッドアイの猫って確か聴覚障害の確率が高いんだよ」
「ふむ、そうなんだね。よく知ってるね」
「こじ……実家の近くで偶に野良は見ることがあってさ。姉さん達から聞いた」
レイフォンが育った孤児院は裕福な区画にあったわけでは無い。
捨て猫や野良猫を見る事も間々ある環境だった。
迷い猫を探して手間賃を稼いだりした事もあり、多少の知識は知っていた。
「希少価値で喜ばれて、でも生まれ持った障害で、か」
「あくまで予想だよ。障害も絶対じゃないし流石にそんな理由は滅多にない」
「……そうだね。……ッ!」
痺れを切らしたたのだろう。鋭く鳴いた猫はカノンの手に尖った爪で猫パンワンパンして道向こうの茂みの中へ消えて行った。
カノンの人差し指に三本の赤い線が引かれ、血の玉が浮かぶ。
「野良だろうし消毒した方が良いよ。少し歩くけど薬局あったはず」
「気にしないで。持ってるから平気だよ」
カノンは腰に付けたポーチから携帯用の簡易救急セットを出す。
消毒して絆創膏を巻く。処置を終えて道具を仕舞う。
ポーチを閉じる前に棒付飴玉を一つ出してカノンは口に放り込む。
「結構怪我することが多くて持ってるんだ。それにしても逃げられちゃったね」
立ち上がったカノンは猫が逃げた方を悲しげに見つめる。
「変に餌付けとかしない方が良いよ。情も移るし」
「そっか……」
カノンは帽子を被り直す。視線をバス停の方へ向け、商業区の門の方へと動かしていく。
視線の先には商業区の中の方へ向かう学生や、喫茶店のテラス席でお茶を飲む女生徒の姿もある。
もう少しすれば食事時だ。人通りもそれなりに多い。
「沢山いるね。皆、此処以外の都市から来てるんだよね。……レイフォンはさ、何処か来たの? 遠い?」
「グレンダンから来たよ。槍殻都市とも言われてる。かなり遠いはず」
「……ごめん、知らないや。ボクの故郷は燐光都市シャイルだけど知ってる?」
「僕も知らないや」
そっか、まあ、そうだよね。そうカノンは少し寂しげに言う。
レイフォンとしてもグレンダンは有名な方だと思っていただけに少し驚きであった。
「そういえばさっき言ってたけど、レイフォンはお姉さんが多いの?」
「結構沢山いるよ。言っちゃうと孤児院だから血は繋がってないけどね。皆、もう出て行ったよ」
別に隠す事でもないだろうとレイフォンは告げる。
それを聞いたカノンは自身
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