第二章 【Nameless Immortal】
参 振り下ろされた兆し
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は浮かべてレイフォンの手を離す。
不思議な感覚だとレイフォンは思った。
天性の物だろう。カノンの言葉や笑みにはその裏が無いと感じさせる何かがあった。
言葉や笑みがストンと心の底に落ちてくる。
心の中で他者と自分の間に引いた線があったとして、いつの間にかそっと内側に一歩踏み込まれている。
或いは気付けばこちらから一歩踏み出している。
警戒心を抱かせない、そんながカノンには雰囲気があった。
「ふふ、ごめんごめん。意地悪な事言ったね。そうそう、良かったらルシル君以外も飴いるかな? 美味しいよ」
カノンがポシェットを開く。
甘い物が苦手だというニールは断り、取りあえず貰える物は貰っておこうとレイフォンは一つだけ出された飴玉をポケットにしまう。
「実はこの都市でやりたいこともあってさ、都市警に目を付けられたくないんだ。流せるならボクもそれが良かったんだ」
「つまり来訪者ってわけか。カノンさんは何でこんなとこに居たんだ?」
砕けた口調でルシルが言う。
恐らくだが、合意が得られるまでのつもりの敬語だったのだろう。
「動物を見に来たんだけどね、可愛い猫がいたから追いかけてたんだ」
「それで俺は死にかけたのか。一瞬、曾爺さんの顔が見えたぞ」
「そこは本当にごめんね。まあ共犯者って事でさ。曾御爺さんは何か言ってた? そういうの凄く興味あるんだ」
「知らん。今度実家に手紙で聞いとくから、知りたければ宛先教えてくれ」
死に際に身内の顔が浮かんだ事あったかな、と何となくレイフォンは思った。
無駄な会話をしている最中、ニールが横から口を挟む。
「少しいいですか。一応、カノンさんのお願いが何なのか聞きたいのですが」
「ん? うん、確かにそれは大事だね。実は君たちに二つ頼みたいことがあるんだ。一つ目はその……バイト紹介してくれないかな?」
聞けば滞在費が残り少ないとの事。
色々好き放題に使った結果、切り詰めて残り数日分は有るが底をつくのは時間の問題。
お金を稼ぎたいが、勝手知らぬ外の都市。聞くなら地元民にということらしい。
「一応、そういう来訪者向けの仕事もあった気がするけどそっちは?」
よほどの事が無い限り返金の可能性が皆無な来訪者向けの金貸しは行われない。
だが窃盗を始めとした様々な理由で資金が無くなる来訪者も居ないわけでは無い。
そういった相手を対象とした仕事の斡旋も多くの都市で行われている。
レイフォンが嘗て行っていた出稼ぎも考えようによってはその一種であり、都市によっては仕組みの一部として組み込まれている。
生徒中心の学園都市では他都市に比べ少ないが、ツェルニにも一応は存在している。
「一応見たけど、時給が低めでさ……そ
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