第二章 【Nameless Immortal】
参 振り下ろされた兆し
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旅行の準備といえば一般的には何を示すだろう。
行程表を組む事か、事前調査をする事か、道具を用意する事か。
時間確保のための休暇を取るという事もあるだろう。
何にせよ突発的なそれでない限り、旅行には大なり小なり労力が伴う。
それが決行間近で「あ、やっぱ無しで」とされた時、思う事は人それぞれだろう。
「旅行は中止、ですか?」
「そうなるかな。何とも悪いね」
理由を問う困惑した声と悪気の無い声が部屋に響く。
レイフォンはその様子を某として眺めていた。
時は太陽が天頂を過ぎて暫くしての事。
昼食を終えた昼下がり、クラリーベルとレイフォンはカリアンに呼ばれ生徒会長室に居た。
バイトを控えているレイフォンは制服、暇を潰していたクラリーベルは私服である。
応接用のソファの片方にクラリーベルとレイフォンが並んで座り、目前のテーブルには在庫処理代わりのエナジードリンクが二本置かれている。
握っていたペンをカリアンは置き、ファンシーな弁当箱など雑多な執務机から腰を上げる。封筒を持ちもう対面側のソファに座る。
「ツェルニの進行方向が変化したと報告があってね。出かけて貰う必要が消えたんだ」
封筒をクラリーベルに渡したカリアンは疲れた様子で言う。
胸元を軽く叩くカリアンを横目にしたクラリーベルが中の書類に目を通す。
レイフォンも横から書類を覗き込む。
記載内容は進路変化の時刻、変化角、汚染獣との距離、etc.
結論として汚染獣と遭遇する可能性が極めて低い事が記載されている。
「もう少し早く教えてくれてもよかったのでは?」
「再度進路が変わる可能性もあった。ある程度の見込みが出るまでは伝えられないよ。生憎と私には電子精霊と通ずる力はないのでね」
「それはそうですが……ん?」
「どうかしたかい? ああ、中にある進路予想図だと一目で分かるよレイフォン君」
封筒の中から進路予想図をレイフォンは取り出す。
大雑把な地図――地図と言えるほど詳細ではないが雑な形は分かる――に以前の予想進路と現時点での予想進路が書かれている。
進路は途中で大きく変化し、汚染獣の地点から離れていくのが分かる。
「確かにこれなら問題無さそうですね」
カリアンとレイフォンの間をクラリーベルの視線が動く。
「その対応……いやまあ、レイフォンが良いならいいのですが。取りあえず、私たちが出る必要はもう無いという事でいいんですね?」
「サットン君たちにはフェリから伝える。緊急事態があれば別途伝えるが、今回はこれで終わりだ。ご苦労だったね。謝礼も前金分は払うよ。残りの休暇を楽しんでほしい」
溜息を吐きつつカリアンは眼鏡を外し目元を揉む。
疲れを滲ませているがどこか安堵
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