傷痕
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払い、奉は本に目を落とした。…頑固なまでにいつも通りだ。
「離散の件で調べて分かったんだが、こいつらにとって『風鎌薬』が揃っていることよりも『3頭揃っている』ことのほうが重要らしいんだよねぇ。今更こんな狂暴な組み合わせを野に放ったところで、元鞘どころか排除されるのがオチかねぇ」
―――狂暴な組み合わせっつったか今。
「どっちもリスクは大きいがねぇ、ノーガードで野に放つよりはお前が抑えておく方が幾らかマシか。『ボス』さえはっきりしていればこいつらは落ち着くんだ。使いこなしてみな」
……そう唆されて、現在特訓中だ。
奉は『包丁と変わらん』と云っていたが、まじでビックリする程、包丁と変わらない。この辺かな、この位切りたいな、と考えて少し集中してからスッと視線を滑らせると、すぱっと切れている。力加減や距離感などはもう少し慣れが必要だが、羊羹くらいなら全く問題ない。俺がシリアルキラーだったら小躍りモノだろう。
「欲を云えば、もう少し真っ直ぐ、均等に切れるといいねぇ」
少し不揃いな栗羊羹を、奉は手掴みでどんどん口に放り込む。
「…糖尿で循環器科に回されるぞ」
「…不便だねぇ、好きなものを好きなだけ食べられもしない。痛覚も余計だねぇ」
まだ、腕を動かしたり身をよじったりする度に顔をしかめる。魂は不滅でも、肉体には限界がある。何となく、こいつは死なないものだと思い込んでいたけれど…。
「―――あれから、夢は見るか」
俺の目を覗き込むように、奉が身を乗り出した。
「あの夢は、見ていない」
「ふぅん…」
唸りながらまだ俺の目を覗き込んでいる。奉はそういう部分、子供並みに遠慮がない。感情が見える分、きじとらさんの凝視とは少し質が違う。
「夢は見るけど、一応聞くか?なんか角が1本しかない赤い牛が紫色の下をべろんべろんさせながら首をかしげて小梅に算数を教えているという」「いらん。訳が分からん」
だよね。
「お前から抜けた連中が次は何処に隠れたのか、手がかりでも残っていればと思ったけどねぇ…」
「俺の夢に残っているかもしれないぞ。一昨日の夢は統合失調症患者の心象風景を再現したテーマパークでガンダムが半分埋もれた砂漠を父さんと歩いているんだがその足跡から血のシミがじわりと広がってヒィって」「いらんて」
だよね。だが変な夢って無性に話したくなる。
「…お前、そんなに頻繁に夢を見る質だったか?」
「最近は頻繁だ。あの件より以前は、ちらほらだったなぁ。見るけど毎日じゃなかったし、ここまで変な夢はあまり…」
「じゃ、そいつは囮だねぇ」
羊羹の残りを手早く片付け、奉は傍らの湯呑に手を伸ばした。きっと、きじとらさんが淹れた茶だ。もう俺はこれを呑めないのだろうか。あの洞に行くたびに、針の筵に座らされる思いをするんだろうか…。
「人の夢をいじくっ
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