暁 〜小説投稿サイト〜
提督はBarにいる。
魂の在処
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ざけが過ぎる物で無ければ何でもいいさ。」

 余程辛かったのか、響はまだ水をゴクゴク飲んでいる。そんなに飲んだら折角の酔いも覚めてしまいそうな物だが。まぁいい、最後は日本を感じられる……そんな一杯を。

 まずはスミノフの40度を20mlに、クランベリージュースを30ml。そこに加えるのがとっておき、桜リキュール。以前早霜が作っていたCC桜が気に入ったんで店でも仕入れる事にした1本だ。桜の花と葉を漬け込んで香りを移した香り高いリキュールだ。そんな桜リキュールを、香り付けに10ml。それをステアした物をカクテルグラスに注ぎ、塩抜きして桜リキュールに浸けておいた桜の花を浮かべれば完成だ。

「本日最後の一杯、『桜舞(おうぶ)』だ。時期が時期だしな、味わって飲みな。」

「ありがとう……とても美しいカクテルだ。味も…何だか懐かしいな。」

 やはり響は響。ロシアに引き渡されて名前も姿も変えようとも、その中身は紛れもなく日本の駆逐艦『響』なのだ。その魂さえぶれなければ、孤独を恐怖する事も無くなるだろう。

「美味しかったよ、ご馳走さま。」

 そう言ってカウンターの席を立った響の顔は、心なしか晴れやかだ。

「司令官。」

「なんだ?」

「また……寂しくなったら飲みに来てもいいかい?」

「あぁ、いつでも来い。」

「……ありがとう。」

 そう言い残して去った響を見送りながら、次は何を飲ませようかと思案しつつ、俺は店仕舞いの支度に入った。

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