卵とひよこと鶏と『守破離』
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足を付けて立つ。これが『破』だ。」
「ひよこ、ですね。」
「その通り。だが、ひよこってぇのはまだまだ半人前。師匠である親鳥なんかに教わりながら、巣立ちの準備をする。」
準備が出来たら火を止め、割下に卵を流し入れる。この時、完全に固まりきらないようによくかき混ぜてかき玉状になった所にすかさず水溶き片栗粉を入れる。これでとろみの付いた半熟卵の餡が出来る。
「朝潮、丼にご飯盛ってくれ。」
「了解です!」
朝潮の盛ったご飯に炭火焼きにした鶏をのせ、そこに半熟卵餡をかけ、三つ葉なんかを飾ったら完成だ。
「さ、出来たぞ。『炭火焼きとりの親子丼』だ。冷めない内に食おう。」
「はいっ!」
「「いただきます!」」
ご飯と餡、鶏を一緒に箸の上に乗せ、そのまま口の中へ。鶏の香ばしさと餡のふわトロ感がご飯に絡み合う。美味い。そして落ち着く味だ。
「美味しいです……とっても美味しいです!」
涙をぽろぽろこぼしながら、掻き込むように食べる朝潮。
「そういや、話が途中だったな。ひよこが一人前になった時、それは親……つまりは師匠から離れて己の道を歩み出す時だ。」
「それが『離』……。巣立ち、ですか。」
「俺が見る限り、朝潮はまだまだ『守』と『破』の間位だ。神通から基本の型を教わっても、まだ一人では完璧には出来ないだろ?」
俺の指摘にう、と軽く呻いて食べる手を止めた朝潮。
「はい……お恥ずかしながら。」
「それが何よりの証拠だ。夕立はな、川内に教わる以外にも神通に皆が教わっていない時間で型を教わってた。今なら神通に手取り足取りして貰わなくても演武くらいやってのける位には、な。」
「えっ!?」
朝潮は驚いていた。神通と川内は実戦的な分、教え方がハードだ。一回の訓練で息が上がってしまう者がほとんど。実際、朝潮もそうだった。
「夕立は、『破』と『離』の間位だ。師匠に教わりつつ、自分に出来る事、出来ない事を分析して、出来ない事も自分の出来る事に変換して取り入れる。それは夕立のオリジナル……つまりは『離』に通じる物だ。」
『破』と『離』の間がどれだけ間が空いているのかはその人次第だ。そこをどれだけのスピードで埋められるかも、本人の努力と才能、ゴールが無いのではなく、どれだけの距離が離れているかの差だ。
「だから、な?あんまり気に病むな朝潮。目指すゴールは一緒だ。それが今、夕立とお前の現在地の差があるだけだ。」
「成る程……ありがとうございます、司令官!朝潮、訓練に邁進します!」
残りの親子丼を掻き込んだ朝潮は、椅子からピョンと飛び降りると、ビシッと直立不動で敬礼した。そうそう、それでこそいつもの朝潮だ。
「では、ごちそうさま
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