暁 〜小説投稿サイト〜
提督はBarにいる。
忠犬の悩みと親子丼
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た拘りの逸品だ。

「さ、遠慮なく飲みな。」

「い、頂きます。」

 俺もゴクリと一口。氷で冷やされた香ばしい麦茶が喉を駆け抜けていく。この清涼感が堪らなく嬉しい。まだ少し酒が残っているから余計に沁みる。朝潮も喉が渇いていたのか、ゴクゴクと飲み干している。

「……それで、何であんなに落ち込んでた?」

 二杯目の麦茶を注いでやりながら、朝潮に尋ねた。

「今日、神通師匠と川内師匠の下の駆逐艦同士で、5対5の模擬戦をやったんです。」




 ウチの鎮守府では、『徒弟制度』というのを採用している。鎮守府所属の艦娘全体の能力の底上げを目的に、自分が技術を教わりたい艦娘の下に『弟子入り』するのだ。教わる側には技術の向上、教える側には己を律する事が不可欠になる為、互いにメリットがある。

 駆逐艦は大概、軽巡に教えを乞う事が多い。清霜のように長門や武蔵に弟子入りして射撃精度を高めたり、初風のように妙高に弟子入りする、なんて変わり者も中には居るが、ほとんどは軽巡に師事している。高速且つ近接の戦闘と雷撃をこなす軽巡は、駆逐艦にとってしてみればいい手本だろう。中でも、神通・川内・五十鈴・由良辺りは人気が高い。教え方も丁寧で、直ぐにでも実戦で使えそうな技術が多いそうだ。特に、神通と川内は軽巡最強のツートップを張るだけあって、弟子の駆逐艦のライバル意識も強い。

「月に一度か二度、川内派の方達と『手合わせ』するのですが、今日がその日だったんです。」

「ははぁ、何となく話が見えてきたぞ。」

 恐らく、朝潮は負けたのだ。それも、完膚なきまでに。

「で、相手は誰だったんだ?」

「……夕立さんです。」

 あぁ、それはしょうがないと言葉を出しかけて飲み込んだ。朝潮にしてみれば改と改二の差はあれど、同じ駆逐艦なのだ。それなのに完敗しては、落ち込むのも無理はないだろう。

「まぁ、夕立はなぁ。あいつは別格だ。身体能力は高いし、何より努力家だ。」

「何でですか!」

 ダン!と朝潮がカウンターを拳で叩いた。

「私だって努力してるのに!してるのに……う、うぅ…。」

 あ〜あ〜、泣いちまった。んなつもりは無かったんだが。そもそも、神通と川内のベースとしている武術体系的に相性は悪いのだ。

 神通は剣道や空手など、直線的で動きを覚えやすい物をベースにしている。それを反復して動きの精度を上げる事で、攻撃の速度を上げるのだ。

 逆に川内は目指している究極系が忍者であり、柔術等のトリッキーな技が多い。夜戦等でも相手に気取られずに背後を取り、必殺の一撃を叩き込んだりと奇襲を好む傾向が強い。弟子の駆逐艦も師匠の影響を色濃く受けて、朝潮は直線的な動きが多く、逆に夕立は奇策・奇襲が多い。夕立からすれば
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