あの懐かしの味を、もう一度。
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、よく飲むなぁ。」
既に大ジョッキで6杯目だ。今日は珍しくハシゴせずにまっすぐウチに来ているからか、普段よりハイペースに飲んでいる。
「だってしょうがないでしょ!?いつもの面子はみ〜んな出撃しちゃってるし。独りで飲むのが寂しかったからここに来たんだもの。」
ブスッとしながらお通しに出した枝豆を、プチプチとつまみながら愚痴る足柄。
「そっか、足柄は皆でワイワイ飲むのが好きなのか。」
「そうよぉ。カレシでも居ればその人と飲むのが理想だけどぉ、私は乾き切ってますからぁ!」
そう言ってさらに勢いをつけてジョッキを煽る足柄。面倒な飲み方をしやがる。その間も俺は源たれを再現しようと作業を続ける。林檎やにんにく、生姜に玉ねぎをすり下ろし、醤油、味醂、酒を加熱して火を止めた鍋に加える。
源たれを味わった時にまず感じるのは玉ねぎとスパイスの辛味。そこに林檎と味醂、酒の甘味が追いかけてきて、にんにくの香りが全体を包む。そしてそれら全てを纏め上げる醤油のどっしりとした旨味だった。すり下ろした野菜とフルーツをかき混ぜて馴染ませたら、一味唐辛子と数種類のスパイスを加えて更に混ぜる。粗熱が取れたら味見。
「ん!」
美味い。完璧に同じでは無いが、これなら十分に使える。
「出来た!」
「え、出来たの!?味見させてさせて〜!」
タレだけ、というのも味気ないので豆腐を食べやすい大きさに切ってネギを散らし、そこに源たれモドキをかけてやる。
「ハイよ、『たれがけ冷奴』。」
「ふ〜ん、冷奴を焼肉のタレでねぇ……。」
フルフルと揺れる絹ごしを箸で切り分け、たれと絡めてやる。そして口内に放り込んだ瞬間、足柄が歓喜の声を上げる。
「何これ!すっごい美味しい!」
「だろ?生姜やらにんにくやらしっかり利いてるから下手に甘ったるくないんだよ。」
「うんうん、それに玉ねぎとか林檎の味もしっかりするからたれ自体が凄く美味しい!」
よほど気に入ったのか、猛烈な勢いで冷奴を食べきった足柄。
「じゃあ特別だ、俺の思い出の味をご馳走してやるよ。」
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