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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百二十九話 末裔
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反対したが他に手が無いと押し切られた。一体なんであんなに無自覚なのか、上に立つものとして無責任に過ぎよう。皆がその事では憤慨している。

リヒテンラーデ侯達も頭に来たのだろう、司令長官をフロイライン・ミュッケンベルガーと即結婚させた。これで少しは司令長官も自重と言う言葉を覚えるだろう。出来れば早く子供も生まれて欲しいものだ。人の親になれば少しは自分の命について責任を持ってくれるに違いない。

ゼーアドラー(海鷲)の入り口のほうでざわめきが起きた。どうやら司令長官が来たらしい。視線を向けると司令長官とリューネブルク大将の姿が見えた。司令長官がこちらを見ると笑みを浮かべて軽く右手を上げた。その姿に皆が笑みを浮かべ視線を交わした。今夜は楽しくなりそうだ……。



宇宙暦 797年 11月 6日    ハイネセン 統合作戦本部 ジョアン・レベロ


「それで、軍は何か分かったかね?」
「地球教ですが信徒が憂国騎士団にかなり浸透しているようです」
トリューニヒトの問いかけにボロディン本部長が言い辛そうに答えた。そんなボロディンの姿にトリューニヒトが苦笑を漏らす。

「私に対する遠慮は無用だ、彼らとは今では何の関係も無い。それで他には?」
「彼らは憂国騎士団の中でももっとも過激な主戦論を展開しています」
「煽っているということか……」
「そういうようにも見えます」

応接室の中で視線が交錯した。トリューニヒト、ホアン、ネグロポンティ、ボロディン、ビュコック、グリーンヒル、私、そして応接室のスクリーンにはヤン・ウェンリーが映っている。重苦しい沈黙が落ちた……。主戦論を煽っているだけ……。普段なら”馬鹿どもが”と眉を顰めて終わりだろう。しかし例の推論が正しければ同盟と帝国の共倒れを狙っての事という事になる、眉を顰めて済む問題ではない。

「他には何か分かったかね」
「今のところはまだ……」
ボロディン本部長の答えに彼方此方で溜息が漏れた。反国家活動をしているならともかく、主戦論を煽っただけでは取り締まりは出来ない、そう思ったのだろう。

「レベロ委員長、そちらは何か分かりましたか?」
「残念だが文書の類は残っていなかった」
ビュコック司令長官の問いに私が答えるとまた溜息が漏れた。

「そうがっかりするな、文書は残っていなかったが人は残っていた」
「?」
私の言葉に皆が、トリューニヒトを除いた皆が訝しげな顔をした。
『人は残っていたとはどういうことでしょう? 当時の関係者は生きていないはずですが……』
ヤン・ウェンリーが問いかけて来た。何人かが同意するかのように頷く。

納得のいかない表情をしている彼らにトリューニヒトが説明を始めた。取引は同盟人が行ったであろうこと、その人物、おそらくは財界人と思われる
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