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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百二十九話 末裔
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にファーレンハイトは苦笑して頭を掻き皆は笑い声を上げた。
皆がヤン・ウェンリーと会いたがっている。第三次ティアマト会戦、第七次イゼルローン要塞攻防戦、シャンタウ星域の会戦、そのいずれの戦いでも抜群の働きを見せた。特に第三次ティアマト会戦、第七次イゼルローン要塞攻防戦では英雄と呼ばれている。
第七次イゼルローン要塞攻防戦後にヴァレンシュタイン司令長官は決して五分の兵力では戦うな、最低でも三倍の兵力はいる、と我々に注意した。司令長官が其処まで危険視するヤン・ウェンリーとはどのような人物か、皆興味津々なのだ。
「暇なときにシミュレーションを申し込んではどうだ? メックリンガー」
「まあ受けてはくれんだろう」
けしかけるようなクレメンツにメックリンガーが冷静に答えた。二人の会話に皆が頷いている。メックリンガーの言うとおり、難しいだろう。どちらが勝っても変なしこりが残りそうだ。本人達ではなく周囲が騒ぐだろう。
「まあ、シミュレーションは止めておくのだな。今回は捕虜交換に集中したほうが良い」
「ケスラー提督の言うとおりです。司令長官はシミュレーションが嫌いですからね。イゼルローンでヤン提督とシミュレーションをしていたなどと聞いたら気を悪くしますよ」
ミュラーの言葉に何人かが肩を竦めた。司令長官のシミュレーション嫌いは皆が知っている。“戦争の基本は戦略と補給”、それが司令長官の口癖だ。実際その通りなのだが司令長官くらい徹底している軍人はいない。だからこそ司令長官が務まるのだろう……。
「今度オーディンに戻ってくるのは三ヵ月後か……。帝国はまた変わっているだろうな、楽しみだ」
「卿、それが楽しみでイゼルローンに行くのではないだろうな?」
クレメンツの言葉に皆が笑い声を上げた。メックリンガーも笑っている。国内警備の任を終えオーディンに戻って一番最初に思った事がそれだ。帝国は変わった。これからも変わる、良い方向にだ。
誰よりも一般兵士達がそれを理解している。そしてそのために自分達は戦っているのだという気概を持っている。今回司令長官は自分たちが警護に就く事に当初良い顔をしなかった。兵士達を休ませてやりたいと思ったのだろう。だが警護に就きたがったのは兵士達の方なのだ。捕虜交換に役に立ちたい、司令長官と共に帝国を良い方向に変えたい、そう思っている。
そんな兵士達や我々にとってキュンメル男爵邸で起きた事件は恐怖以外の何物でもなかった。いくら婚約者を人質に取られたからといって、助かる成算が有ったからと言ってゼッフル粒子の充満した屋敷に出向くなど司令長官は一体何を考えているのか! おまけに自分が死んでも帝国には何の変化も無いなど、余りにも無自覚すぎる。
内乱の時もそうだった。自らを囮にする作戦を実行するなど無茶が多すぎる。
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