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落ちこぼれの成り上がり 〜劣等生の俺は、学園最強のスーパーヒーロー〜
番外編 文倉ひかりの恋路
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。そんな私の疑問に、さっきのおませさんが答えてくれた。
「いんちょーせんせーと、えほんよんでるよ」
「……そっか。ありがとう」
私は男の子の頭をそっと撫でて、施設の中に向かう。大路郎君に孤児院を案内する気でいたけど、その前に瑳歩郎に「ただいま」と言ってあげたい。
――私だって、「お母さん」なんだから。
老朽化の影響がちらほら見受けられる建物の中だけど、まだまだ施設としての機能は十分。
私はひび割れた壁に手を添え、せめて子供達が独り立ちするまでは、彼らの居場所として存在していてほしい、と切に願う。
「……ある日、おじいさんと、おばあさんが……」
その時、奥にある院長室の入口から声が聞こえてきた。
私を育てて、守ってくれた院長先生がいる部屋。そのドアを慎重にノックして、私は反応を待つ。
「はい、どうぞ」
帰ってきたのは、聞き慣れた、暖かい声。聞いていて、安心する声。
私はゆっくりとドアを開き、その声の主と対面した。
「あら。お帰りなさい、ひかり。いつも元気で、なによりですねぇ」
「院長先生……ただいま」
柔らかい笑顔で私を出迎えてくれた、優しげなおばあさん。この人が、私を支えてくれた院長先生「
加室由里女
(
かむろゆりめ
)
」。
この加室孤児院を創設した初代院長であり、今まで多くの孤児達を養育してきた人。
私と鋭美は、この人のおかげで生きることができた。そして私は……瑳歩郎を産んで、育てることができたのよ。
院長先生は椅子に座って、自分の膝の上に乗せた瑳歩郎に、「桃太郎」を読んで聞かせている。その向かいの椅子には……何故か大路郎君が座っていた。
「――おう、ひかり」
「大路郎君、どうしてここに?」
「あ、いや、駐車場にセイサイラーを停めた後に従業員さんに誘われてさ。是非院長に会ってほしいって言われたんだ」
「大路郎さんのことは、ひかりからよく聞いておりましたからねぇ。一度、お話をさせていただきたかったんですよ。鋭美のことについては、何とお礼を申し上げればいいのか……」
「いえ、俺は俺にできることをやっただけのことですから」
「あらまぁ、見かけによらず奥ゆかしいこと。ひかりも鋭美も、良い人を見つけたことですねぇ」
院長先生は朗らかな笑顔で大路郎君を見詰める。
瑳歩郎も、路郎君が来たことを喜んでいるらしく、桃太郎の絵本越しに大路郎君に注目して「パパー!」とはしゃいでいる。
「さぁさぁ、せっかく三人集まったのですから、近くの街にお出かけに行かれてはどうですか? 若い者同士で、心行くまで語り合うのがよろしいでしょう」
すると、院長先生は瑳歩郎を膝からゆっくり降ろすと、大路郎君の元
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