暁 〜小説投稿サイト〜
落ちこぼれの成り上がり 〜劣等生の俺は、学園最強のスーパーヒーロー〜
番外編 文倉ひかりの恋路
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なのずるいし、大路郎君を騙したくない。
私は笑顔を取り繕って、「なんでもないよ。さ、行こ!」と元気に出発を促した。
丘の上にある宋響学園から坂道を下り、二十分ほど下町を走った先に、「加室孤児院」がある。私にとっての「帰る場所」であり、掛け替えのない世界。
少し古ぼけた小さな施設だけど、そこで暮らす子供達はいつも、優しい従業員さん達と一緒に笑顔ではしゃぎ回っている。
この日も例外ではなく、私が帰ってきたと悟るや否や、何人もの子供達が満面の笑みで私の乗るセイサイラーに集まって来る。
「おねーちゃん、おかえりー!」
「あそぼ、ねぇ、あそぼ!」
いきなり子供に囲まれて面を喰らっている大路郎君に苦笑を見せながら、私は子供達に諭すような口調で話し掛ける。
「ちょっとだけ待っててね。このお兄さんを、案内しなくちゃいけないから」
「ふーん。お兄ちゃんって、なんでおねーちゃんといっしょなの?」
「え? ま、まぁ、俺は彼女に誘われたからで――」
「おねーちゃんの、おむこさんなの?」
それを聞いた瞬間、私はムスッとした顔で、「おむこさん」発言をやらかした男の子にげんこつをお見舞いした。
ちゃんと手加減はしたから痛がってはいないけど、なんで怒られたのかはわかってないみたい。
「なんでおこられたの? ぼく」
「きっとお兄ちゃんのこと、まちがえたからだよ」
「そっかー! じゃあお兄ちゃんは、おねーちゃんのだんなさまなんだね!」
――も、もう! これじゃあキリがないじゃない!
「ひかり? 顔が赤いけど……大丈夫か?」
「じ、大路郎君は早くバイクを停めて! 従業員さんが駐車場まで案内してくれるからっ!」
自分でもわかってしまうくらいに頬を紅潮させたまま、私は遠くで手を振っている二十代くらいの従業員さんを指差す。
大路郎君は「お、おう。わかりましたー! 今行きまーす!」と、私の態度にたじろぎながら従業員さんの指示に従い、セイサイラーを移動させていった。
ひとまず、当の本人がこの場を去ってくれたことに一安心。
「もう……いきなり来たばかりの人に、あんなこと言っちゃダメよ!」
「ちがってたの?」
「ち、違うっていうか、その、今は違うけどいずれはそうなりたいっていうか……ああん、もう! とにかく、おねーちゃんとお兄ちゃんのこと、からかっちゃダメだからねっ!」
「からかってないよ! おーえんしてるんだよ!」
――純真無垢な子供達の瞳に、思わず言葉が詰まる。子供にやり込められるなんて……うう。
「――そういえば、瑳歩郎はどうしたの? 姿が見えないけど」
ふと、私は子供達の中に自分の息子がいないことに気づく
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